「豊洲 千客万来」紆余曲折経て2月1日オープン 東京・豊洲市場に新たなにぎわい

手前は飲食店などが入る「食楽棟」。奥は温泉やホテルなどが入る「温浴棟」=29日、東京都江東区
手前は飲食店などが入る「食楽棟」。奥は温泉やホテルなどが入る「温浴棟」=29日、東京都江東区

豊洲市場(東京都江東区)の観光施設「豊洲 千客万来」が2月1日にオープンする。市場移転に遅れること5年以上。運営業者の撤退や小池百合子知事の市場移転延期表明、東京五輪・パラリンピック開催に伴う建設コスト高騰や新型コロナウイルス禍など施設オープンまでには紆余(うよ)曲折があった。都の市場担当幹部は「ようやくここまできた」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

飲食、温泉、宿泊も

運営事業者の「万葉倶楽部」(神奈川県小田原市)によると、施設の敷地面積は約1万平方メートル。江戸の街並みをイメージした「食楽棟」と24時間営業の温泉やホテルなどが入る「温浴棟」からなる。

「豊洲場外 江戸前市場」と名付けられた食楽棟は、市場に隣接する強みを生かした海産物などを楽しめる。オープン時点で飲食店を中心に約50店舗が営業を始め、4月までには計約60店舗になる。温浴棟「東京豊洲 万葉倶楽部」には、神奈川県の温泉地、箱根と湯河原から毎日源泉が運ばれ、東京湾を望む露天風呂や足湯などを整備。万葉倶楽部によると初年度は食楽棟200万人、温浴棟60万人の入場を見込んでいる。

都との関係「良好」

施設オープンまでにはいくつものハードルがあった。すしチェーン店「すしざんまい」で知られる喜代村(中央区)など当初事業者に内定していた2社が相次いで撤退。その後、万葉倶楽部に決まり、東京五輪前のオープンを目指したが、小池氏の市場移転延期表明という難局を迎えることになった。移転延期の過程で小池氏が示した旧築地市場跡地の活用方針に反発し、万葉倶楽部側が「撤退」を示唆したことも。この時は小池氏と万葉倶楽部側のトップ会談で最悪の事態は免れた。

豊洲市場の観光施設「豊洲 千客万来」事業者の万葉倶楽部、高橋真己副社長。マスコミ向けの内覧会でオープンまでの過程を振り返った=29日、東京都江東区
豊洲市場の観光施設「豊洲 千客万来」事業者の万葉倶楽部、高橋真己副社長。マスコミ向けの内覧会でオープンまでの過程を振り返った=29日、東京都江東区

その後も東京五輪開催の影響に伴うコスト高騰や東京五輪延期、コロナ禍が追い打ちをかけ、万葉倶楽部は計画変更を余儀なくされた。平成30年10月の豊洲市場開場から5年以上、施設オープンが大幅に遅れた要因は幾重にも折り重なる。

万葉倶楽部の高橋真己副社長は「(都との)行き違いから色々なことがあった。『明日契約解除』のようなこともあったが協議を重ね、その後には都に協力してもらった。今は非常に良い関係だ」と友好関係を強調した。

ライバルは築地

今後は、旧築地市場のにぎわいを残し今も多くの観光客が訪れる築地場外市場との競争になる。コロナ禍が明け、国内ではインバウンド(訪日外国人客)による旅行消費が好調。築地場外市場にも連日、多くのインバウンドが集まる。一方、築地に比べ、都心からのアクセスに劣るとの指摘がある豊洲市場。万葉倶楽部はどのように勝負するのか。

高橋副社長は「みなさんは築地と比較すると思うが、(市場移転後の)築地は、(豊洲とは)違う進化をするのではないかと思う。こちらは市場の隣という地の利を生かしたい」と話し、市場との連携を進めていく方針。施設には大手旅行代理店が飲食店として進出していて、大型の団体客を含むインバウンド誘客につながることが期待される。また、万葉倶楽部側はアクセス向上に向けて、都に対し新橋-豊洲間を約15分で結ぶ東京BRT(バス高速輸送システム)の本数増を要望している。(大泉晋之助、写真も)

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