ホテル業界は「量より質へ」…高級化への動き加速、旅先での体験を重視する「コト消費」移行進む

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 観光庁が発表した2023年の訪日外国人の消費額が初めて5兆円の大台を突破し、政府が昨年策定したばかりの目標を早くも達成した。中国人観光客を中心とした「爆買い」はなりを潜め、旅先での体験を重視する「コト消費」へ移行が進むなか、重要性を増しているのが宿泊だ。円安を追い風に、ホテル業界では高級化への動きを加速させている。(鈴木瑠偉)

客室10万円

 「この客室から日本のブランド力を発信したい」

朝日焼の湯飲みなどを備えたパレスホテル東京の客室(東京都千代田区で)
朝日焼の湯飲みなどを備えたパレスホテル東京の客室(東京都千代田区で)

 パレスホテル東京(東京都千代田区)の渡部勝総支配人は17日、宇治茶のティーバッグや朝日焼の湯飲み、西陣織のクッションを備えた期間限定の客室を紹介した。

 円安に加え、海外でインフレが進んだこともあり、欧米からの観光客にとって日本旅行の割安感は強まっている。ホテルにとっては、単価を上げやすい状況だ。パレスホテル東京では、コロナ禍前は7万円程度だった客室単価が、23年には10万円を超えた。宿泊客の7割程度が外国人といい、渡部氏は「パリやニューヨークのホテルに比べるとまだまだ割安」と話す。

 高級ホテルでも人手不足が続くため、客室稼働率を上げずにサービス水準を維持し、「量より質」への転換を図っているという。

 国内では、帝国ホテルが26年に京都で新規開業するほか、「ブルガリホテル東京」など外資系高級ホテルの進出も相次ぐ。

買い物 19年下回る

 観光庁によると、23年の訪日外国人1人あたりの支出額は21・2万円と、19年(15・9万円)から3割以上も増えた。このうち宿泊費の比率は34・6%と、19年から5ポイント以上伸びている。

 観光庁の高橋一郎長官は17日の記者会見で、「コト消費の成長の兆しが見えてきている。長く滞在し、様々な体験をしていると期待している」と評価した。

 一方で、かつて訪日消費の主役だった買い物代は伸びていない。23年は1兆3954億円で、19年(1兆6690億円)を下回る。中国人観光客の回復が遅れていることが大きな要因だ。

 ネット通販の普及で、日本に行かなくても購入できる商品は多くなった。かつてのような盛り上がりは期待しづらいとの見方は多い。

地方誘客なお課題

 豊かな自然や文化を抱える地方への誘客は、課題として残っている。観光庁によると、昨年10月時点の外国人延べ宿泊者数は、3大都市圏で19年の水準を超えているものの、地方部では19年より1割ほど少ない。地方独自のコト消費を開発するため、地元に精通したガイドの育成や環境の整備など長期的な取り組みも必要となりそうだ。

 政府は30年までに訪日客の消費額を15兆円へ拡大する目標を掲げる。旅行大手の幹部は「富裕層はサービスへの期待も大きく、そこでしかできない体験を提供する必要がある」と指摘する。一方、みずほリサーチ&テクノロジーズの坂中弥生上席主任エコノミストは「旅行予算の拡大はコロナ明けの反動で、一時的なものにすぎない」と分析する。

株・為替情報はこちら
スクラップは会員限定です

使い方
「経済」の最新記事一覧
記事に関する報告
4941469 0 経済 2024/01/18 05:00:00 2024/01/18 07:49:22 2024/01/18 07:49:22 https://www.yomiuri.co.jp/media/2024/01/20240117-OYT1I50208-T.jpg?type=thumbnail

主要ニュース

セレクション

読売新聞購読申し込みキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)