スイスポート、36協定再締結 運航への影響は当面回避
空港の地上業務を手がけるスイスポートジャパン(大阪府泉佐野市)は29日、残業に関し労使で定める「36協定」を12月1日付で再締結することに労働組合と合意したと発表した。労組は長時間労働が改善されていないとして12月から時間外労働をしないと会社に通知していた。当面は航空機の運航への影響などは回避される見込みだ。
合意を受け、スイスポートジャパン労働組合の新城正樹執行委員長は「組合としての思いが会社にしっかりと届いたことで、将来の業務量適正化の道筋が明確になった」と説明した。吉田一成社長は「労使共同での適切かつ厳格な労働時間管理や、長時間労働を生み出さない(業務の)受注体制の構築など再発防止に取り組む」とコメントした。
労組には管理職を除いた社員約1400人のうち9割が加入している。11月30日付で36協定を破棄して残業を一切しないとの通知を15日付で会社に送っていた。新型コロナウイルス禍の落ち着きで航空需要が急回復するなか、業務の負担増で長時間労働が改善されていないことを理由としていた。
労組側が破棄を通知した36協定の有効期間は12月31日までで、再締結する新協定の効力は12月1日から1カ月間。航空便に影響を与えない形でエアラインや同業他社に取り扱い便の一部の地上業務を引き受けてもらい従業員の業務量を削減することや新規採用の強化といった会社側の提案を労組が受け入れた。2024年1月1日付で改めて36協定を締結し直すとしている。
同社は空港の地上業務を担うグランドハンドリング世界大手のスイスポートインターナショナルと丸紅の共同出資会社で、羽田空港や関西国際空港など国内6空港に拠点を構える。顧客の多くは海外の航空会社で航空機誘導や荷物の積み下ろし、チェックインカウンターの業務などを担っている。
グラハンを担う事業者は国内に約400社ある。8月に業界団体「空港グランドハンドリング協会」を設立し、55社が加盟する。従業員の待遇改善や人材確保などに業界全体で取り組む。航空需要が回復するなかで対応は喫緊の課題だ。