外国人宿泊者が前年10倍超に 民泊の需要回復を国も後押し、「質」に課題も

インバウンドに好評だという「民泊内村 天守閣ルーム」=東京都大田区
インバウンドに好評だという「民泊内村 天守閣ルーム」=東京都大田区

昨年10月に行われた新型コロナウイルスの水際対策緩和や円安の影響でインバウンド(訪日外国人客)が再び増加し、コロナ禍で苦境に立たされた民泊も需要が回復しつつある。外国人の宿泊者数は、前年の10倍以上に急増した。こうした追い風を生かそうと、国は一部事業への参入要件を緩和。受け入れ体制を整えて後押しするが、ルールが順守されるか課題もある。

「予約ゼロ」が急転

「1年ほど前は予約がゼロだったが、今は来年春まで埋まっている」。住宅と町工場が立ち並ぶ東京都大田区の一角で民泊を営む内村喜信さん(69)は、自慢の部屋の人気ぶりにうれしい悲鳴を上げる。

自宅兼工場の4階にある「民泊内村 天守閣ルーム」は、城好きだった父親が天守閣をイメージして作った。壁には金箔があしらわれ、襖の絵柄は松竹梅やクジャク。料金は1泊1室1万5000円前後だが、特にインバウンドに喜ばれるという。内村さんは「訪れた海外の人が日本とのつながりを深めていくことにやりがいを感じる」と話す。

観光庁によると、今年4~5月の2カ月間に全国の民泊を利用した宿泊者数は24万8629人で、前年同期の約1・8倍。なかでも半分弱の45・9%を占めた外国人の宿泊者数は、前年同期の13倍近くに急増した。

一方で、コロナ禍以降減少が続いていた民泊の届け出件数は、今年7月14日時点で1万9935件。回復基調にあるものの、ピークだった令和2年4月10日の2万1385件にはまだ及んでいない。

実務経験が不要に

ニーズの急回復に受け入れ側が追い付かない状況を改善しようと、国土交通省は7月19日に住宅宿泊事業法の施行規則の一部を改正し、民泊物件の管理業者の参入要件を緩和した。

家主が居住していない民泊物件については、清掃や苦情への対応などを管理業者に委託しなければならない。管理業者に登録するには、不動産関連の資格や2年以上の実務経験が要件だった。これを緩和し、20時間の通信講座と7時間の講義を受けて修了試験に合格すれば、資格が得られるようになった。

ただ、そもそも管理委託制度は、以前に苦情の急増を受けて義務化された経緯がある。条件を緩和したことで管理業者の質が低下する恐れもある。

民泊の課題に取り組んでいるオスカー(東京都大田区)の中込元伸代表によると、家主不在型の民泊では、自治体の条例を守らない事業者が少なくないという。「宿泊客が安心して利用するためのルールの順守や違法民泊の取り締まりが課題になる」としている。

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