アングル:マウイが直面する被災と観光の二律背反、一部住民から怒りの声

アングル:住民の多くは観光で生計、復興か経済かで悩むマウイ
 8月16日、過去100年間で最悪の山火事に見舞われた米ハワイ・マウイ島では、捜索救助隊が廃墟や海で行方不明者を探し回るかたわら、観光客がトロピカルビーチを楽しむという光景に、一部の住民から怒りの声が上がっている。写真はラハイナで焼けた車両を捜索する救急隊。15日撮影(2023年 ロイター/U.S. Army National Guard/Staff Sgt. Matthew A. Foster)
[16日 ロイター] - 過去100年間で最悪の山火事に見舞われた米ハワイ・マウイ島では、捜索救助隊が廃墟や海で行方不明者を探し回るかたわら、観光客がトロピカルビーチを楽しむという光景に、一部の住民から怒りの声が上がっている。
歴史的なリゾート地、ラハイナでは死者数が100人を超え、その数は日々増え続けている。住民らは、被災地で観光客がシュノーケリングなどを楽しんでいる動画をソーシャルメディアに投稿し、憤りを爆発させた。
ハワイの俳優ジェイソン・モモアさんは、インスタグラムで「私たちのコミュニティーには、癒し、悲しみ、回復の時間が必要だ」と述べ、観光客に旅行をキャンセルするよう促した。
マウイ島経済は観光業に依存しており、当局や企業はコロナ禍後、旅行者が徐々に戻って来れば経済的打撃が和らぐと歓迎してきた。島の経済開発委員会によれば、観光業はマウイ島の「経済のエンジン」であり、富の80%を生み出している。
マウイ島はこれから、長くつらい復興に乗り出す。当局は、住民の住宅や必要物資という当面のニーズと、島の長期的な財政健全性とのバランスをどうとるか苦慮している。
ジョシュ・グリーン・ハワイ州知事は週末の記者会見で、新型コロナウイルスのパンデミックが起こった際も、州は観光客受け入れのリスクと、観光客を締め出すことによる経済的打撃を比較衡量する必要があったと振り返った。
「全ての住民が食いつないでいく必要があり、子どもたちに仕事や未来を残さないわけにはいかない。ある地域への旅行を制限することは、ほかでもない地元住民に多くの点で打撃を及ぼすことになる」と知事は語った。
山火事から1週間、観光業は直撃を被っている。
ハワイ州ビジネス・経済開発・観光局によると、13日に航空機でマウイ島を訪れた人の数は、昨年の同時期と比べて81%近く減少した。
米国勢調査局の最新の数字によると、2022年には人口16万5000人のマウイ島を290万人の観光客が訪れた。州観光局は今年2月、観光客は22年にマウイ島で56億9000万ドルを支出したと報告している。
ハワイ州観光局は観光客に対し、火災の影響を受けたマウイ島西部への不要不急の旅行を控え、地元住民の復興に資源を使えるようにしてほしいと呼びかけている。
観光局広報担当のイリヒア・ギオンソン氏は「被災し、家族を失い、家を失った人々の多くは観光業に従事していたと思われる」と語った。
マウイ島西部のホテルは一時的に予約受け付けを停止している。観光局によると、多くのホテルは従業員を宿泊させ、避難民や災害緊急対応者を受け入れる準備をしている。
同観光局は、カフルイ、ワイルク、キヘイ、ワイレア、マケナなど、マウイ島で山火事の被害を受けなかった地域を訪れる観光客に対し、宿泊施設に連絡し、受け入れを続けているかどうか確認するよう呼びかけた。
マウイ郡のリチャード・ビッセン郡長は州知事とともに会見し「マウイ島は閉鎖されていない。住民の多くは観光で生計を立てている」と述べた。
マウイ島南部にあるフォーシーズンズ・リゾート・アット・ワイレア・ビーチに15日に電話で問い合わせたところ、ホテルは通常営業を行っているが、8月に予約している観光客には、島の他の地域が十分回復するまで旅行を延期するよう勧めていると答えた。客室稼働率は、火災以来「劇的に」低下しているという。
ハワイ全島に23のホテルを持つヒルトン・ワールドワイド・ホールディングスは、8月31日までハワイ全島を訪れる旅行者、全島から出る旅行者、全島を経由する旅行者に対し、キャンセル料を免除すると発表した。
ロサンゼルスを拠点とする旅行会社プレザント・ホリデーズのジャック・リチャーズ最高経営責任者(CEO)は、火災の間、マウイ島にいた400人以上の宿泊客を避難させるために奔走した。電話やインターネットが不通になり、作業は難航したという。
大半の観光客は、最終的に他のハワイ諸島に移動した。8月にマウイ島への旅行を計画していた別の顧客1400人は、予約を取り直す必要があるとリチャーズ氏は語った。
火災後、マウイ島西部やその周辺でサービスを提供し続けた旅行業者には批判が殺到した。
ラハイナから18キロの地点で11日にチャリティー・シュノーケリングツアーを催行した会社はその後、謝罪コメントを出し、当分の間業務を停止すると発表した。
(Doyinsola Oladipo記者、Julia Harte記者、 Rich McKay記者)

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