復活インバウンドに「混雑」が冷や水 空港の入国審査待ち1時間以上も

アジアからの便が到着し、賑わう関西国際空港の国際線到着口=19日午前11時23分(彦野公太朗撮影)
アジアからの便が到着し、賑わう関西国際空港の国際線到着口=19日午前11時23分(彦野公太朗撮影)

日本政府観光局が19日発表した3月の訪日客は181万7500人に上り、新型コロナウイルス禍前の令和元年同月比で約7割まで回復した。国内の空港では運航を見合わせていた国際線の運航再開や新規就航が相次いでいる。懸念されるのが入国審査で、最長待ち時間が1時間以上の空港も。受け入れ態勢の準備不足が、コロナ禍前の混雑ぶりに拍車すらかけている。訪日客の玄関口となる空港での待ち時間は日本の「第一印象」となり、訪日の満足度も左右しかねない。

「待ち時間20分以下」達成は遠く

「着陸して到着ロビーにたどり着くまで2時間かかった。特に待たされたのは入国審査の手続き。複数の窓口に合計で70~80人は待っていたようにみえた」

関西国際空港から18日に入国した中国・大連の男子学生(18)は、そう疲れた表情を見せた。関空では4月に入ってコロナ禍で激減していた中国本土からの航空便が次々と再開。そのほかの国際路線も増便が続いており、入国時の混雑が目立ち始めている。

入国手続きには大きく分けて検疫、入国審査、税関の3つがある。特に入国審査は時間がかかるとされ、政府が平成19年の第1次観光立国推進基本計画で、待ち時間を20分以下とする目標を設定。審査官の増員に加え、審査ブース前に並んでいる間に顔写真の撮影や指紋採取を済ませることができる機器「バイオカート」などを導入してきた。

だが、訪日客が急増する中で目標の達成は難しい。出入国在留管理庁が平成29年に公表を始めた待ち時間に関する統計によると、同年月別の20分以内の達成率は成田空港も関西国際空港も概ね60%台~70%台にとどまり、2年後の令和元年も状況は変わっていない。最長待ち時間も両空港で1時間以上となることが珍しくない。同庁の担当者は「到着便のタイミングが重なった場合などに混雑する」と説明する。

訪日客増えれば状況悪化は必至

コロナ禍の本格化で2年4月以降は統計をとっていないが、直近で審査官を〝フル態勢〟に戻した羽田空港でも、一時的にコロナ禍前並みの混雑が生じているという。現時点では早朝や夜間など人員が手薄な時間帯や到着便が重なったときなど混雑の発生は局所的だが、このまま訪日客数が増えれば状況悪化は必至だ。

運輸総合研究所の春名史久主任研究員は「待ち時間の公表を早く再開して『見える化』し、円滑化の度合いをチェックできるようにすべきだ」と指摘する。

政府は今後も顔認証システムの利用拡大、出発空港で渡航前に個人識別手続きを済ませるシステムなどを導入していく方針だ。(藤谷茂樹、福田涼太郎)

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