経済効果は2兆円超 「新しい価値」を生み出す場に…万博まであと2年

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地盤の整備が進む万博会場予定地(5日、大阪市で)
地盤の整備が進む万博会場予定地(5日、大阪市で)

 2025年の大阪・関西万博の開幕まで、13日であと2年となる。コロナ禍や急激な物価上昇を背景に会場施設の計画見直しといった課題が浮上する中、民間パビリオン(展示館)や最先端技術を披露する未来社会ショーケース事業などの準備が着々と進む。万博の経済効果は2兆円を超えるとされる。恩恵が中小企業の成長や国内の観光産業振興などに広く波及するよう、開幕までにいかに機運を醸成するかが重要となる。(杉山正樹)

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準備加速

 三菱グループは10日、マザーシップ(母船)をイメージした外観のパビリオン「三菱未来館」の概要を発表した。三菱電機やローソン、ニコンなどグループ31社が関わる展示内容は、「いのちの未来を想像する時間と空間を体験できる」ものになる予定で、今後詳細を詰める。

 民間パビリオンは「万博の華」とされる。企業が最先端の技術を披露する場でもあり、1970年の大阪万博では、「人間洗濯機」が公開された三洋電機の「サンヨー館」などが注目を集めた。

 大阪・関西万博では2005年の愛知万博(9企業)を上回る13の企業・団体が出展する。これまでに、パソナグループがアンモナイトのような外観のパビリオンを建設する計画を公表。日本ガス協会は、持続可能な未来社会がテーマの体験型パビリオンを発表している。13日以降は建設用地の引き渡しが始まり、着工に向けた動きが加速する。

 会場施設を巡っては、万博の運営主体である日本国際博覧会協会(万博協会)が担う工事が世界的な物価高の影響を受け、予定価格内での応札がない事態が相次いだ。民間パビリオンでも費用が当初の想定を上回っているとみられるが、多くは「外部から見えない部分の設計見直しなどで当初の計画を維持する」(出展団体幹部)方針だ。

多くの利点

 パビリオンと並んで注目を集めそうな約30種類のショーケース事業も出そろいつつある。「空飛ぶクルマ」では、日本航空や丸紅などが運航事業者に選ばれ、実際に来場者を運ぶ計画だ。このほか、くら寿司による世界最大規模の回転ずしや、凸版印刷の多言語翻訳システムなどが予定されている。

 万博協会の会場運営プロデューサー、石川勝氏は「(来場者が)民間の知恵による『ワクワク』を楽しめるのと同時に、企業にとっても自社の技術力やブランドの発信、人材育成など多くの利点がある」と企業参加の意義を強調する。

 万博の経済効果を最大化するためには、地元の中小企業の参加が欠かせない。

 りそなグループや池田泉州銀行、大阪商工会議所、大阪府八尾市など計14団体は、中小企業が自社の技術やサービスを大阪府・市のパビリオンに週替わりで展示できる枠組みを用意する。

 万博への出展には多額の費用がかかる。例えば、民間パビリオンは30億~50億円、ショーケース事業も数億円以上の協賛金が必要とされる。この枠組みでは、参加費を無料や1社あたり数十万円程度に抑え、中小企業の負担を減らす。技術やサービスの「芽」を持ち寄ることで新たな事業を生み出す場とする狙いもある。

 池田泉州銀の衛藤章司・地域共創イノベーション部長は「従来の見本市のように単に展示するのではなく、他の参加企業と協力して『新しい価値』を作る意識を企業に持ってもらいたい」と話す。

相乗効果

 万博を核とした観光戦略も動き始めた。半年にわたる開催期間中の想定来場者は約2820万人。うち350万人は訪日外国人客だ。政府や万博協会は万博を入り口に国内各地に訪日客を誘導し、経済効果を広く波及させる絵を描く。

 アジア太平洋研究所(大阪市)は、関西全体を万博会場に見立て、国際会議や商談会、工場の一般公開といったイベントを万博と連動して開催することで経済効果が約5000億円上積みされ、2兆8818億円になると試算する。研究統括の稲田義久氏は「各地に観光需要を分散し、長く滞在してもらう仕掛けが必要だ」と指摘する。

 兵庫県は「ひょうごフィールドパビリオン」と銘打ち、県内各地で体験型観光プログラムを提供する。既に、特産「播州織」の製造体験や漁業体験など100件超を認定。斎藤元彦知事は「県内各地に行ってもらうことにつなげたい」と話す。

 だが、関西以外の地域の機運はまだまだ低い。万博協会は、旅行や交通の業界団体約30者と観光推進ネットワーク会議を1月に設立し、全国の周遊ルートの開発に乗り出した。3月下旬にインテックス大阪(大阪市)で開かれた旅行見本市では、旅行会社や自治体など約70者に交じり、万博協会もブースを設けた。「全国で相乗効果を生み出していくことが重要」(機運醸成局の堺井 啓公よしまさ 局長)として、情報発信に力を入れる。

個人ら参加者 連携企画も

 万博協会は企業だけでなく大学やNPO、自治体、個人といった多様な参加者が連携し、社会課題の解決を目指すプログラム「TEAM EXPO 2025」を用意している。万博の機運を盛り上げるとともに、多くの人を巻き込んで有形無形のレガシー(遺産)をつくる狙いがある。2020年10月に取り組みを始め、今年3月末時点の登録数は1000件を突破した。

 SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた活動などが対象で、登録は無料。個人の場合は2人以上の参加が条件となる。これまでに、▽関西エアポートと大阪府阪南市による大阪湾の藻場の再生事業▽愛好家らが企画するラジオ体操100万人プロジェクト――などが登録されている。

 「共創パートナー」として登録し、活動を支援したり、他の参加者と事業を始めたりする仕組みもある。万博協会は、優れた活動を会場で展示・発表することを計画している。

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3995171 0 2025大阪・関西万博 2023/04/12 06:00:00 2023/11/29 11:53:02 2023/11/29 11:53:02 https://www.yomiuri.co.jp/media/2023/04/20230412-OYO1I50001-T.jpg?type=thumbnail

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