空港近くの「エアポートホテル」続々、訪日客が回復

早朝・深夜便に乗る出張利用ばかりと思われがちだが、実は観光客が多い―。〝寝るだけの場所〟だった空港近くにある「エアポートホテル」の概念がいま、変わりつつある。スイートルームや温泉など滞在性を高めた施設が続々と開業しているが、その大きな動機付けとなっているのは、韓国、台湾、中国などからのインバウンド(訪日客)の回復だ。

星野リゾート(長野県軽井沢町)は20日、都市観光ホテル「OMO(おも)関西空港by星野リゾート」(大阪府泉佐野市)を、関西国際空港の対岸、りんくうタウン駅前にオープンする。16日に内覧会が行われた。

内覧会がおこなわれたOMO関西空港by星野リゾート。21階のレストランからは大阪湾が望める=16日午前、大阪府泉佐野市(須谷友郁撮影)
内覧会がおこなわれたOMO関西空港by星野リゾート。21階のレストランからは大阪湾が望める=16日午前、大阪府泉佐野市(須谷友郁撮影)

駅周辺で最大級の全700室を擁する。エアポートホテルに泊まる約7割は観光客で、連泊は少ない半面、1泊の滞在時間が長いとの独自調査を基に「ファンタイム(楽しい時間)を提供したい」と、飛行機をイメージした内装やサウナ付き温浴施設などを用意。宿泊の3分の2は訪日客と見込む。

同駅直結の「オディシススイーツ大阪エアポートホテル」(全258室)も、別会社から運営を引き継ぐかたちで2月23日に名称を改め再開業した。独立したキッチンや居間のあるスイートルームがあり、中長期滞在にも応えられる。同ホテルの小林二郎総支配人は「関空の復便が進めば、中国などから観光客の予約も増える」と期待する。

「ヴィラフォンテーヌ プレミア羽田空港」の最高級スイートルーム(住友不動産提供)
「ヴィラフォンテーヌ プレミア羽田空港」の最高級スイートルーム(住友不動産提供)

東京では、住友不動産が昨年12月、羽田空港国際線に直結した「ヴィラフォンテーヌ プレミア羽田空港」など2ホテルを同時オープンした。広報担当者は「滞在時間を楽しめ、宿泊にとどまらないオールインワン(複数の機能を併せ持つ)施設」と自信を込める。

空港敷地内にあるホテルとして国内最大級の1717室。展望露天風呂やコース料理も出すレストランがあり、学会や研修旅行などMICE(マイス)が可能な大ホール、会議室を1フロアに集中させるなど機能を充実させた。開業後は韓国や台湾などからの宿泊客が伸び、中国本土からの予約も増えてきた。担当者は「地方への訪日誘客にもつながる」とみる。

日本政府観光局(JNTO)が15日に発表した2月の訪日客数は147万5300人(推計)。新型コロナウイルス禍前の令和元年同月比で43・4%減だが、44・3%減だった1月を回復率で超えた。訪日客回復はエアポートホテルにとっても追い風。ホテルジャーナリストの井村日登美氏は「国内外の航空ファンや、移動時間の節約や出張ついでの観光を求めるマイスの客も取り込める」と、魅力を上げればさらに客層が広がると指摘している。(田村慶子) 

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