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世界中の観光客を魅了するスキーリゾート地、北海道ニセコ地域。かつて山林が広がっていた倶知安(くっちゃん)町のスキー場周辺は海外の投資家らの目に留まり、大型宿泊施設の建設が相次ぐ。開発エリアが拡大する一方で、地元住民は恩恵を感じにくく、町の未来に不安を募らせる。投資に揺らぐ町の現状を追った。【高橋由衣】
魅力のパウダースノー
「米国やカナダ、欧州各地でスキーをしてきたけど、雪がふわふわでここがベストだ」。2月上旬、米サンフランシスコから倶知安町ひらふ地区のスキー場「ニセコ東急 グラン・ヒラフ」を訪れたケビン・リードさん(31)はパウダースノーを初体験し、満足げに語った。
リードさんは米国からパックツアーを利用し、友人6人と10日間の旅行中で、予算は航空券を含め50万円以上。1週間のニセコ滞在には近くのコンドミニアムを利用しているという。「高価な旅行ではあるけど、ぜひまた来たいね」
グラン・ヒラフを運営する「東急リゾーツ&ステイ」によると、年間50万人前後で推移していた利用客は、新型コロナウイルスの影響で一時は3割ほどに激減したが、入国規制緩和もあり今シーズンは8割ほどまで戻っているという。利用客の約7割は外国人で、この日も欧米やアジア系のスキーヤーやスノーボーダーが雪煙を上げていた。
町観光商工課によると、新型コロナ流行前の観光客数は2000年度以降、年間約140万~150万人で推移し、15年度にはバブル崩壊後初めて160万人を超えた。ハイシーズンの冬季(12~3月)は宿泊者の約8割を外国人が占める。ベッド数も年々増加し、町全体の約1万6000床のうち8割超の約1万3500床がひらふ地区に集中している(22年時点)。
スキー場も混雑しかねないことから、グラン・ヒラフは来シーズンに向け、4人乗りリフトを10人乗りのゴンドラに掛け替える予定で、1時間あたりの輸送量は約1・6倍に増えるという。
グラン・ヒラフにつながるひらふ坂には、目新しい欧米風のカフェやスポーツショップが建ち並び、坂を下ると大規模なコンドミニアムが乱立する。長年、スキーのインストラクターをしていた町のタクシー運転手の60代男性は「この坂には数件旅館があったくらいで、何もなかった。ここ十数年で一気に変わったね」と昔を懐かしむ。
コンドミニアム建設などの開発を仲介する不動産業「NISADE」(同町)は、ひらふ地区内で10棟以上を管理する。販売価格は約5000万~8億円にも及び、買い手は香港やシンガポールの投資家が多いという。付近の地価上昇率は国内トップ10入りの常連だ。
同社の橋詰泰治代表は、人気の理由に雪質の良さを挙げた上で「リーマン・ショックや東日本大震災の後も物件の価値が大きく下がらなかった。雪が降り続ける限り価値は担保されるのではないか」と語る。
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