アングル:中国で海外旅行解禁、ロシアルート使える国内航空に勝機

アングル:中国で海外旅行解禁、ロシアルート使える国内航空に勝機
 中国が先日ようやく、コロナ禍に伴う渡航制限を解除したことで、抑えこまれていた中国渡航需要の回復が欧米の航空会社の懐を潤すことになるだろう。とはいえアナリストや航空当局者は、増便の承認や新たな検査ルール、大型機の不足といった点が、依然として収益改善の障害になると指摘している。2021年1月、春節の長期休暇を控えた上海の国際空港で撮影(2023年 ロイター/Aly Song)
[17日 ロイター] - 中国が先日ようやく、コロナ禍に伴う渡航制限を解除したことで、抑えこまれていた中国渡航需要の回復が欧米の航空会社の懐を潤すことになるだろう。とはいえアナリストや航空当局者は、増便の承認や新たな検査ルール、大型機の不足といった点が、依然として収益改善の障害になると指摘している。
中国はアウトバウンド観光客が世界で最も多く、2019年時点の市場規模は2550億ドル(約32兆8400億円)だった。政府が1月8日に強制隔離措置を終了して以来、客足は回復しつつある。旅行会社フォワードキーズの統計によれば、中国発の航空運賃は現在、コロナ以前よりも160%高い水準にある。原因は供給不足だ。
米アイオワ州の弁護士ジュニエン・チャン氏(50)は昨年12月、シカゴとドバイを経由して広東省広州に飛ぶ片道航空券に1600ドルを支払ったという。
「もう3年も実家に帰っていないから、春節は姉妹とともに過ごしたい」とチャン氏は語る。「航空料金はとても高いが」
コロナ以前は、シカゴからの直行便の料金は往復でも1000-1500ドルだった。
ロイターがユナイテッド航空のウェブサイトで3月上旬の価格を調べたところ、サンフランシスコ―上海間の1週間有効の往復航空券はエコノミークラスで3852ドル、ビジネスクラスで1万8369ドルとなった。
航空調査会社シリウムのデータによれば、1月時点で中国発着の国際便旅客機の稼働水準は2019年比で11%にとどまったが、4月には25%に達すると予想される。
予約サイトのエクスペディアは渡航制限解除の発表以降、米国と中国、欧州と中国の航空便に関する検索件数が2倍に増加したと述べている。
中国の航空会社は豊富な人員とワイドボディ機をそろえる上、ロシア領空経由の最短距離に近いルートを利用することで飛行時間を約2時間短縮できるため、コスト・所要時間面で欧米の航空会社より優位に立っている。このため、序盤の勝利が見込まれている。
とはいえ、欧米勢にも収益回復のチャンスはある。もともとは堅調な中国向けビジネス出張市場に注力し、多くの場合は欧米の利用客の需要に合わせてきたが、直接の関係を取り戻すためなら以前より高い料金を払ってもいいという企業があるからだ。
グローバルビジネストラベル協会(GBTA)のシュザンヌ・ノイファング最高経営責任者(CEO)は「新年度の開始に当たって、すでに多くの企業や旅行者が中国への便を予約している」と語る。
<増便承認が壁に>
中国では渡航制限が解除された一方、新型コロナの感染者が急増し、米国、日本などでは中国からの入国者に陰性証明を求めるようになったため、旅行者回復の勢いはそがれている。
業界関係者によれば、増便には双方の規制当局からの承認が必要となり、米中間の貿易摩擦も相まって、短期的に輸送能力が伸び悩む可能性があるという。
シリウムのデータによれば、ユナイテッド航空の中国発着便は2019年1月時点で月584便だった。現在、同社が米国から中国本土に運航できるのは週4便だ。同社は、増便は可能だが、政府の許可待ちだとしている。
1月4日以降、中国国際航空、海南航空、中国南方航空の各社が、一部の路線に関して1日最大1便増やす運航計画案を米国運輸省に提出した。
ポリー・トロッテンバーグ米運輸次官は「いくつか審査中の計画はある」と言うが、米航空各社による中国向けの増便について詳細には触れなかった。
中国向けの増便を希望する外国の航空会社は、中国民用航空局からの承認を受ける必要がある。同局にコメントを求めたものの、回答は得られなかった。
アメリカン航空は今週、ダラス―上海間について、現在のソウル経由をやめて直行便とし、3月から週2便運航すると発表した。ただしそれ以外のフライトについては、市場の需要と政府の規制を見極めるため未定としている。
デルタ航空のグレン・ホーエンスタイン社長は四半期業績の発表に合わせ、「今年後半以降、需要に沿って中国向け輸送能力を慎重に再構築する」見込みだと述べた。
バーンスタインのアナリスト、アレックス・アービング氏は、2019年には欧州発の長距離便のうち約5-6%が中国行きだったと指摘。独ルフトハンザ航空など欧州の一部の航空会社にとっても中国はきわめて重要な市場だと語る。
だがシリウムでアナリストを務めるジョージ・ディミトロフ氏は、欧米の航空会社は今年の夏、手持ちのワイドボディ機を収益性の高い大西洋航路へ優先的に投入する可能性があり、中国向けの新規需要を吸収するには無理があるのではないかと考えている。
西側諸国の航空会社の多くは、コロナ禍で国際的な航空輸送が急減した時期に大型機の運航を停止しており、ワイドボディ機の新規製造も抑制されていた。
(Allison Lampert記者、Jamie Freed記者、Doyinsola Oladipo記者 翻訳:エァクレーレン)

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