焦点:アジア観光業界が中国人旅行者受け入れ態勢、商機復活を期待

焦点:アジア観光業界が中国人旅行者受け入れ態勢、商機復活を期待
 アジア各国の観光業界は、新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策を転換した中国から旅行者が大挙してやってくる事態に備えつつある。写真は北京の空港。2020年11月撮影(2022年 ロイター/Thomas Peter)
[バンコク/シンガポール/シドニー 29日 ロイター] - アジア各国の観光業界は、新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策を転換した中国から旅行者が大挙してやってくる事態に備えつつある。一部には国内への感染につながることを巡る懸念はあるが、「商機」の復活を待ち望むムードが強いのは間違いない。
中国では来年1月8日以降、海外からの入国者に対する隔離義務が撤廃され、中国人の海外旅行者も帰国時に隔離の必要がなくなるため、海外旅行の予約が急増している。
コロナ禍前に中国人の海外旅行者が世界中で落としたお金は年間2550億ドルに上ったが、パンデミックでそれがほぼゼロになった。その落差を痛切に感じたのが「中国マネー」に依存してきたタイや日本などのアジア観光業界だ。
フライト追跡データに基づくと現在でも、中国発着の国際旅客線の便数はコロナ禍前の8%に過ぎない。ただ感染対策に起因する便数制限が緩和されているのに伴って、航空各社は輸送能力増強を検討している。
接客サービスのコンサルティング会社C9ホテルワークスのマネジングディレクター、ビル・バーネット氏は「中国本土の旅行者がタイの観光産業回復の起爆剤となるのはほぼ疑いの余地はない。もはやそれが現実化するかどうかではなく、どの程度の規模でどのぐらい急速に起きるかの問題だ」と述べた。
マレーシア航空とベトナムの格安航空会社ベトジェットエアは、来年6月までに中国便の数をコロナ禍前に戻したいとしている。中国の各航空会社も、夏の運航スケジュールが始まる3月末から大幅な増便に動く公算が大きい、とモーニングスターのアナリスト、チェン・ウェン氏は顧客向けノートに記した。
<リベンジ旅行>
中国の富裕層がまた海外で「爆買い」をするとの期待から、今週は高級ブランドメーカーの株価が上昇している。3500億ユーロ(約49兆円)規模とされる世界の高級ブランド品市場で、中国人の購入額は21%を占める。
中国人の旅行需要が最も高まるのは春節(旧正月)で、来年1月21日に始まるこの春節を前に各国の観光業界も一段と力が入っている。
シンガポールの豪華ホテル、ソフィテルシンガポールセントーサリゾート&スパは、中国人旅行者の取り込みを狙って鍋料理のブッフェやカップル向けの特別なパック商品を用意している、と幹部は説明した。同ホテルが想定しているのは、いわゆる「リベンジ旅行」の盛り上がりだ。
日本でも、はとバスが来年1月から、パンデミック中はずっとやめていた中国語のツアーを試験的に開始し、春までに全面再開することを目指す。広報担当者が明らかにした。
もっとも日本は中国国内の急速な新型コロナウイルス感染拡大を警戒し、中国からの入国者には今月30日から到着時の検査を求めるとともに、陽性者には7日の隔離を義務付けた。米国も中国からの入国者に陰性証明提出を義務付ける方針で、インドやイタリア、台湾も検査を義務付ける方針を示した。
これに対してオーストラリア、ドイツ、タイなどは当面、中国からの入国者に特別な規制は適用しないと表明。フランスはミニブログの微博(ウェイボ)に、中国の友人を「心から」歓迎すると強調するメッセージを投稿した。
オーストラリア国内からは、春節に多くの中国人旅行者が戻ってくると見込むのは恐らく間違いだとの声も聞かれた。メルボルンに拠点を置く旅行代理店幹部のジェームズ・シェン氏は、航空運賃が高騰していると指摘するとともに「まだ便数は非常に少ないだろう。本格的な(需要)回復は来年6月か7月になるのではないか」と期待先行を戒めた。
(Chayut Setboonsarng記者、Xinghui Kok記者、Stella Qiu記者)

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