中国発の渡航者、8日からPCR検査など必須に 首相表明

岸田文雄首相は4日、三重県伊勢市で記者会見し中国からの渡航者を対象にした新型コロナウイルスの水際対策を8日から強化すると発表した。入国時に義務付けてきた検査をより精度の高いPCR検査などに切り替える。米欧各国も相次ぎ規制を強めている。
日本の新たな水際対策は8日午前0時から適用する。直行便での入国者には出国前72時間以内の陰性証明の提出も求める。

2022年12月30日に始めた現在の対策は抗原検査キットによる簡易的な検査を実施する場合があった。PCR検査や抗原定量検査を必須にし、中国での感染急拡大が日本に波及するのを抑える。
中国からの渡航者と第三国経由でも7日以内の中国渡航歴がある人に入国時の検査を義務付ける。陽性で症状がある場合は待機施設で原則7日間の隔離措置をとる。航空会社に中国と往来する航空便を増やさないよう求める要請も継続する。
中国本土からの直行便の到着は成田、羽田、関西、中部の4国際空港に限定している。香港とマカオからの直行便は4空港以外の到着を認める。
首相は訪日外国人(インバウンド)観光の喚起は続けると強調した。「訪日外国人の旅行消費額5兆円超の速やかな達成をめざし集中的な政策パッケージに基づく取り組みを進める」と語った。
米国と英国、カナダ、オーストラリアは5日以降、中国からの渡航者に出発前48時間以内に受けた検査の陰性証明の提示を要請する。各国ともPCR検査と抗原検査のどちらでも可としている。
米国務省のプライス報道官は3日の記者会見で「中国では感染が急増しているが、適切かつ透明性のある(感染)データが足りない」と指摘した。「感染拡大を遅らせ変異型を警戒するため積極的な措置をとる」と述べた。
英国は12月29日時点では水際対策強化について「予定はない」と説明していたのを転換した。理由として情報公開の不足を挙げた。
中国は12月14日に感染者の大半を占める無症状の感染者数を非開示とし、公式な統計から感染の実態を把握することが難しくなった。
韓国と台湾、フランス、イタリアは既に中国からの渡航者に入国時の検査を実施している。モロッコは1月3日、中国からの渡航者の入国を禁止した。
欧州連合(EU)の欧州委員会は中国からの渡航者に対する出発前検査の導入を検討している。加盟国の医療専門家でつくる保健安全委員会(HSC)が3日に会合を開いた。報道官は「圧倒的多数の国が出発前検査を支持している」と話した。
中国外務省の毛寧副報道局長は3日の記者会見で各国の規制強化に関し「政治的な目的で防疫措置をもてあそぶことに断固反対する」と反発した。「中国だけを対象に入国規制を実施するのは科学的ではない。対等の原則に基づき相応の措置を取る」と主張した。
中国は12月7日に感染対策を大幅に緩和した後、感染が急増した。医療専門家の曽光氏は29日に「北京市の感染率は80%を超えた可能性がある」との見解を示した。
EUの欧州委員会は3日、中国にワクチンの寄付などの支援を申し出たことを明らかにした。米国も中国に米国製ワクチンを供与する考えを表明ずみだ。
一方で中国側は海外製ワクチンの受け入れに消極的だ。中国国内では効果が低いとされる国産ワクチンしか原則使えず、感染急拡大の一因になったとの見方がある。