都市型観光復活の兆し 年末年始のホテル利用大幅増

新型コロナウイルス禍が本格化して3回目となる年末年始を控え、国内旅行需要は堅調な回復傾向を見せている。JTBの動向調査によると、今回の年末年始は、利用予定の宿泊施設を「ホテル」と回答した人が大幅に増えたのが特徴。都市部に集中しているホテル利用の増加について、専門家は「人の流れが戻りつつある」と指摘している。

JTBの推計によると、23日~来年1月3日の国内旅行者数は2100万人。前年比16・7%増で、コロナ禍前の令和元~2年と比べて7割超となる数字だ。

同期間に旅行を予定している1319人が回答したJTBの動向調査では、利用宿泊施設を尋ねた設問で「ホテル」との回答が43・1%で前年と比べて8・5ポイントも伸びた。「旅館」(全体の11・8%)が6・9ポイント減、「実家・親族の家」(同34・5%)は2・4ポイント減など、軒並み減少傾向だった中での急伸だ。

旅行先を尋ねた設問で前年比の増減率を見ると、大都市から中距離圏にある甲信越や中国(いずれも1・2ポイント減)などが大きく数字を落とす一方、大都市を擁する関東(0・4ポイント増)、東海(0・8ポイント増)、近畿(0・1ポイント減)はいずれも〝善戦〟した。

同社の担当者によると、都市に滞在して観光資源を楽しむ「都市型観光」が回復傾向にあると分析。クリスマスや年末年始に実施される多くのイベントが復活し、30代以下の若い層が需要を牽引しているとみる。

感染防止の観点から避けられていた都市部に対する警戒心が和らいでいることも背景にあるとみられ、人が密集しづらい自然や温泉地に近い旅館への需要が反動で減ったとの見方だ。

日本ホテル協会幹部は「ようやく明るさが見えてきた」と期待。一方で「都市部、特に東京は地方と比べても需要が低迷していたので、それほど客室利用率は高くない」と説明する。

また、コロナ禍を受けた深刻な人手不足は解消の見通しが立っていない。客足が戻り始めている現在も、都市部のホテルでも規模の大小を問わず、予約制限などフル稼働できない状況が続いているという。

日本総合研究所の高坂晶子主任研究員は「まだ完全ではないが、多人数に対する抵抗感が薄れ、人々のメンタルも以前に戻りつつあり、『ウィズコロナ』は常態化している」と指摘。人手確保に向け「待遇改善が急務。正規雇用を増やし、キャリアパスも見えやすくするなど人材活用の長期戦略が必要」としている。(福田涼太郎)

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