近鉄エクスプレスとANA、脱炭素航空燃料の利用増へ協力
近鉄エクスプレスは10日、脱炭素につながる航空燃料(SAF)の利用を増やす全日本空輸(ANA)のプログラム「SAFフライトイニシアチブ」に参加する契約を結んだと発表した。契約期間は10月~2023年3月の6カ月間。
近鉄エクスプレスはANAが調達するSAFのコスト分として1億円を負担し、代わりに航空輸送で1000トンの二酸化炭素(CO2)を減らしたことを証明する証書を受け取る。証書は、CO2削減への貢献を取引先や投資家に開示する際などに活用する。
世界的な脱炭素の流れで、航空輸送をする荷主が輸送時のCO2排出量の開示を重視し始め、貨物事業者は対応を迫られている。近鉄エクスプレスが世界の航空輸送で出すCO2は年間300万~350万トン。今回契約した削減量は0.1%以下にすぎないが、同社の鳥居伸年社長は「気候変動対応としてCO2排出削減を進めていくためにも、意義のあることだと考えている」とコメントした。
近鉄エクスプレスは21年、日本通運、郵船ロジスティクスと同プログラムに参加し、3社で輸送をした。今回は1社での追加契約となる。
航空会社にとっても、貨物事業者とSAF利用を進めるメリットは大きい。SAFは原料の生産・収集から製造、燃焼までのライフサイクル全体で、従来の航空燃料と比べてCO2排出量を約8割減らせる。
ただ世界の供給量は航空燃料消費量全体の1%以下で、日本ではまだ商用生産できない。コストも従来の航空燃料の3~5倍と高く、費用を負担する協力相手が必要になる。ANAの井上慎一社長は「SAFの普及促進には様々なパートナーの協力が必要」と話す。
温暖化ガス排出を実質ゼロにするカーボンゼロ。EVや再生可能エネルギー、蓄電池、各国政策などの最新ニュースのほか、連載企画やデータ解説を提供します。
関連企業・業界