宿泊予約アプリ、利用者数がコロナ前上回る
読み解き 今コレ!アプリ フラーAppApeLab編集長 日影耕造氏
3年ぶりに新型コロナウイルスに関連する行動制限が伴わなかった2022年の夏。人々の旅行への志向や行動の変容をアプリのデータが捉えた。
フラー(新潟市)が手がけるアプリ分析ツール「AppApe(アップ・エイプ)」によると、22年8月の旅行&地域カテゴリーの月間利用者数上位アプリのうち、宿泊予約を主な機能とする20アプリの合計は677万人だった。
コロナ前の19年8月に比べて1.9%増加し、8月としては初めてコロナ前の水準を上回った。前年に比べると47.7%増と回復基調は鮮明だ(数値はすべてiOS・アンドロイド合算)。
コロナ感染拡大の第7波がピークを迎えたものの、行動制限が伴わなかったことで人々の旅行へのマインドが高まった上に、都道府県による旅行割引施策もアプリ利用を後押しした形だ。
22年8月の宿泊予約アプリの月間利用者数の首位は「楽天トラベル」。19年に比べ27.0%増となった。年代別構成を見ると、最多の40代が27.9%、30代は26.8%、50代は21.4%と続く。
2位の「じゃらん」も0.2%増とコロナ前の水準に回復した。30代と40代がそれぞれ26.9%、50代が26.7%と30~50代が満遍なく利用している。
3位の「ブッキングドットコム」は9.4%減だが21年と比べると39.0%増となった。20代の割合が31.2%と高く、20アプリの中で20代が最も多いアプリとなっている。
個々のアプリによって年代に特徴はあるものの、宿泊予約アプリ全体を見渡すと幅広い年代層に浸透していることがデータからは見てとれる。
「楽天トラベル」や「じゃらん」といった総合宿泊予約アプリが上位を占める一方で、ホテル直営のアプリも利用を伸ばしている。特に成長が著しいのは、アパホテルのアプリ「アパ直」だ。19年に比べ93.5%も増加し、月間利用者数も4位につけた。
「アパ直」は総合宿泊予約アプリとは趣が明らかに異なる。宿泊予約だけでなく、非対面でのホテルチェックインや領収書の発行、会員証機能などホテルにひもづく体験の向上をアプリによって実現している。
コロナ禍にもかかわらず利用を伸ばしているのは、単に価格優位性があるだけでなく、アプリが旅行そのものの体験価値の最大化に貢献しているからこそだと筆者は感じている。
アプリによって宿泊客との接点を直接つくり出すことは、顧客へのその後の情報発信や改善フィードバックなどあらゆる面で役立つことになるだろう。
インバウンド(訪日外国人)需要の取り込みにもアプリは欠かせない武器になる。海外から訪れる場合は距離が離れているだけにデジタルがファーストタッチポイントとなるからだ。
一方でアプリが旅行の体験価値の向上に関与しているということは、アプリをインストールした時点から"接客"が始まっていることにほかならない。デジタルの体験をないがしろにすることなく、突き詰めることができるかどうかがコロナ後の成長の鍵を握るのは間違いない。
[日経MJ2022年9月26日付]