インバウンド回復まだ遠く 個別旅行解禁求める声

新型コロナウイルス対応の水際対策が緩和され、日本に到着し抱き合う人たち=7日午前、羽田空港(萩原悠久人撮影)
新型コロナウイルス対応の水際対策が緩和され、日本に到着し抱き合う人たち=7日午前、羽田空港(萩原悠久人撮影)

新型コロナウイルスによる政府の水際対策が7日に緩和された。日本への帰国や入国時に義務付けていた72時間以内の陰性証明について、ワクチンの3回接種を条件に免除とし、海外渡航のハードルが下がったことで、渡航する日本人の増加が期待される。一方、訪日外国人観光客(インバウンド)に対しては、個人旅行の制限や査証(ビザ)取得の義務付けなどの制約が残っており、本格的な回復は見通せないままだ。

7日午前8時半すぎ、東京・羽田空港の第3ターミナルの国際線出発ロビーは、キャリーケースを引いた人々でにぎわっていた。「陰性証明が不要になったのは大きい」。シンガポール行きの便を待つ高梨裕子さん(30)は、緩和を喜ぶ。夫が仕事の関係でシンガポールに住んでおり、昨年、現地の病院で陰性証明を発行した際には、1万円以上の費用を負担した。高梨さんは「日本と行き来する回数が増やせる」と話した。

全日本空輸によると、日本発の10月搭乗分の新規予約数は、8月9~15日と直近30日~9月5日で1日当たりの平均を比較すると、約2・7倍に増加した。一方、海外発は日本発の増加分の半分に留まった。

今回の緩和で、パッケージツアーに限定していた観光目的の入国を添乗員の同行がなくても可能としたが、コロナ禍前の外国人観光客は個別手配が72・6%と大部分を占める。入国者数も1日当たり2万人から5万人に引き上げられたが、日本航空の増村浩二・レベニューマネジメント推進部長は「これまでも入国希望者は2万人に達しておらず、個人旅行を解禁しないと5万人まで達しないのではないか」と分析する。

また、全ての国や地域からの入国者のビザ取得を義務付けているのも、大きなネックになっている。足元の円安を追い風にしたい旅行業界からは早期緩和を求める声が上がるが、「ゼロコロナ政策」を続ける中国からの観光需要が戻らないという外的要因も残る。日本総合研究所の調査部、内村佳奈子研究員は「インバウンドがコロナ禍前の水準に戻るには、まだいくつもの課題がある」と指摘した。(浅上あゆみ)

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