関空国際線 運航再開もコロナ前ほど遠く 回復の鍵は中国人客

運航を再開した関空ーソウル線=28日午後、関西国際空港 (安元雄太撮影)
運航を再開した関空ーソウル線=28日午後、関西国際空港 (安元雄太撮影)

新型コロナウイルスの水際対策が段階的に緩和され、関西国際空港でも7月の国際線旅客数は前年同月の4・5倍と急増するなど国際線の運航再開が続いている。強気の戦略を描く航空業界にとって、政府が示した水際対策のさらなる緩和方針は追い風になりそうだ。一方で、コロナ前の水準には依然ほど遠く、本格回復には訪日外国人客(インバウンド)の牽引(けんいん)役だった中国人客の動向が鍵を握っている。

航空各社は強気も

新型コロナの「第7波」は懸念材料だが、航空業界は積極的だ。

外国人観光客の入国解禁(6月10日)以降、週約90便(往復)だった関空の国際線旅客便は、直近で約140便まで増加。韓国エアプサン(ソウル線)▽米ユナイテッド航空(グアム線)▽豪ジェットスター航空(ケアンズ線)▽日本航空(ホノルル線)-と、入国解禁とほぼ時期を合わせて運航再開などにこぎつけた路線が主導している。

日航の宮坂久美子・西日本支社長はホノルル線の再開にあたり「感染拡大による予約への影響はみられない」と話す。実際、お盆期間中(今月6~16日)の日航の関空発着国際線は搭乗率64・8%(前年40・6%)となり、一般に損益分岐点とされる60%を超えた。

ジェットスターの横田敏章・日本支社長も「日本からの移動需要は留学も含めてかなりあり、勝算はある」とする。

むしろ航空関係者は「日本の水際対策が厳しすぎる」と口をそろえる。6月1日に入国者数が1日上限2万人に拡大されたものの、外国人観光客は添乗員付きのツアー客に限定されており、コロナ前実績の14万人に比べると少ない。

岸田文雄首相は今月24日、9月7日から、ワクチン3回接種完了の証明があれば、入国時に求めてきた出国前72時間以内の検査での陰性証明を免除する方針を表明。入国者数の上限引き上げも検討している。

横田支社長は「スキーシーズンを迎える冬には豪州からの訪日需要が見込める。水際対策が緩和されればかなり戻ってくる」として、ケアンズ線を夏期(10月下旬まで)の週最大4便から冬期(10月下旬~3月下旬)には毎日の運航を目指す方針を示した。

中国ゼロコロナ政策

一方、関空を運営する関西エアポートにとっては、コロナ前の国際線旅客数の約4割を占めた中国・香港線の大半が運休しているため、必ずしも明るい見通しを持てない。8月14日~20日の関空の国際線出発便数(145便)のうち、中国線、香港・マカオ線は全体の約4%にあたる計6便のみにとどまった。

背景には、中国政府がコロナの封じ込めを図る「ゼロコロナ政策」を継続し、観光客の入国を認めていないことがある。さらに米国の上下両院議員らの台湾訪問をめぐり周辺で高まった緊張も旅行需要の新たな懸念となっている。

ただ、桜美林大の戸崎肇教授(航空政策)は「中国も水際対策で慎重になりすぎると経済的な打撃が大きく、今年後半から来年には緩和せざるを得なくなるだろう」とし「確実に中国人観光客は戻る。関空は戦略性を持って収益性の高い路線を開拓することが求められる」と指摘する。

中国便の再開に加え、インドや中東、欧米など旅客の回復が早い地域からの路線誘致も迫られる。

1年4カ月ぶり再開

関西国際空港などを拠点とする格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションは28日、関空―ソウル(仁川)線の運航を再開した。新型コロナウイルスの影響で昨年4月から国際線の全路線で運休しており、約1年4カ月ぶりの国際線復活となった。

同日夕に出発した第1便には旅客137人が搭乗。民族衣装「チマチョゴリ」姿の韓国観光公社のスタッフらが歓迎イベントを開いた。ピーチの森健明・最高経営責任者(CEO)は「初心に戻り、安全第一で運航したい」と述べた。

京都市の飲食店勤務、北村萌夏(ももか)さん(22)は「4年ぶりの韓国旅行。現地の友人にいろいろな場所を案内してもらうのが楽しみ」と話した。

ソウル線再開は約2年半ぶり。週6便(往復)で運航し、10月30日から週14便に増便する。(牛島要平)

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