ハウステンボス売却、長崎県のIR誘致に影響も 「地域密着」に暗雲

ひまわりが咲く夏のハウステンボス
ひまわりが咲く夏のハウステンボス

旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)が長崎県佐世保市のリゾート施設「ハウステンボス」を売却する方向で調整していることが21日、複数の関係者の話で分かった。香港の投資会社などへの売却を想定しており、売却額は数百億円に上る見通し。HISは新型コロナウイルス感染症に伴う旅行需要の低迷などで業績が悪化しており、売却することで資金を確保する。施設の営業は続ける見通しだが、地元では動揺が広がっている。

ハウステンボスの株式はHISが3分の2、残りをJR九州などの地元企業が保有しており、各社は同時に株式を売却するとみられる。ハウステンボスは長崎県が推進するカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の候補地にもなっており、誘致に影響を与える可能性もある。HISは「株式の譲渡を含め様々な検討を行っているが、現時点において具体的に決定した事実はない」とのコメントを発表した。

ハウステンボスはオランダの街並みを再現した施設として平成4年に開業したが、膨大な初期投資が経営を圧迫して15年に会社更生法の適用を申請して経営破綻。22年にHISが買収し施設の立て直しを進めてきた。

ただ、コロナ禍の影響でHISの収益が悪化。令和4年4月中間連結決算は、最終損益が269億円の赤字で、中間決算として過去最大の赤字となった。こうした中、4年3月中間連結決算で営業黒字を確保するなど、業績が上向いているハウステンボスの売却に向け、調整を始めたとみられる。

佐世保市の担当者によると、コロナ前は年間250万人以上が訪れる人気観光施設で市内での宿泊など地域経済への貢献も大きい。「HISが取得してからは季節の花とイルミネーションが楽しめる施設として魅力が増していただけに、売却が事実なら今後の運営がどうなるのか心配だ」と話す。ハウステンボスに出資する地元企業の関係者は「外資系の投資会社だと地域密着という話でもないだろう。株を保有していても仕方ないという話になりそうだ」と冷めた様子で話していた。(蕎麦谷里志)

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