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海外教育旅行メールマガジン 11月20日号
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旅行中の水分補給の大切さ

旅行中の水分不足になりやすい状況と予防
  今回の「新潟県中越地震」で、発生から92時間後に奇跡的に救出された幼児は、救急治療後に元気になるとまず「水」を要求しました。また道路をはじめ様々なライフラインが遮断された町や村では、多くの人々が食料とともに水を求める姿が報道されました。これらのニュースでお判りのとおり、人間にとって水分は欠かせない必要なものなのです。
  人間は全く水が手に入らなかったならば、1週間程度しか生きることができないと言われています。
  水分を適切に取ることは、なにもこのような特殊な状況のときだけではなく、日頃から心がけることが大切です。特に、旅行中は、水分の補給が怠りがちになりますので注意が必要です。
  そこで、「旅行中の水分補給の大切さ」をテーマに、正しい水分補給の方法と旅行中に体の水分不足(脱水)になりやすい状況とその予防についてシリーズで連載いたします。

飛行中の機内は予想以上に乾燥しています
  第1回は、飛行中の水分の補給方法と旅行者血栓症“いわゆるエコノミークラス症候群”の予防法について説明します。
  飛行中の機内の湿度は、機内に取り入れている外の空気が乾燥しているために、飛行時間が長くなると低下し、相対湿度で20%以下にまで低下してしまいます。快適な湿度が40%から70%といわれていますので、機内はかなり乾燥していることになります。したがって、飛行中に水分補給をしていないと、知らない間に体内の水分が蒸発(不感蒸泄)して、脱水になってしまいます。このような機内での脱水が原因で、トイレに行く途中で失神(脳貧血)を起こしたり、持病の心臓病が悪化したりすることがあります。また、機内での脱水は、旅行者血栓症“いわゆるエコノミークラス症候群”の誘因としても重要視されています。
  飛行中の脱水を予防するためには、我々の調査では1時間当たりKg体重2mlの水分を補給する必要があることが判明しています。50Kgの女性ですと、1時間に100mlとなります。また、機内では、脱水を起こしやすいアルコールやカフェインの入った飲み物は控えめにすることも大切です。
飛行中の機内は予想以上に乾燥しています。

長時間すわっていると旅行者血栓症“いわゆるエコノミークラス症候群”の危険も

  長時間下肢を動かさないで座り続けていると、下肢の血液の流れが悪くなり、これに機内の乾燥も加わって。下肢の血液の粘度が高まり、膝の裏側や太腿の静脈に血栓と言われる血の塊ができることがあります。
  血栓は座っている間は下肢にとどまっていますが、フライトが終わり目的地に着いて歩き始めると、血栓が移動して肺の中の細い血管で詰まってしまい、最悪の場合死にいたってしまいます。これが“いわゆるエコノミークラス症候群”です。
  このような血栓は、飛行機の中だけではなく、車や列車などの中で長時間座っていても起こります。そこで、旅行中の乗り物すべての中で、予防に努めてもらうために、現在は「旅行者血栓症」という名称で広く注意喚起がなされています(http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsasem/news/ecs.html)。今回の新潟県中越地震で、避難している住民が車中で泊まった後に、肺の動脈に血栓がつまって死亡したのは、旅行者血栓症と同じように、足を動かさずに長時間座っていたからです。
  旅行者血栓症予防のためには、危険因子(心臓病・血栓の既往・最近の手術など)をお持ちの方が弾性ストッキングや薬剤による予防を主治医の先生と相談することです。それに加え、機内で脱水にならないように水分を補給することと、足の運動を定期的に行うこと、ゆったりとした服装で搭乗することなどの一般的な注意を守ることも重要です。
  なお、イオン飲料水のほうがミネラルウォーターよりも脱水予防と下肢の血液粘度の上昇を抑える効果に優れています。


情報提供: 大塚製薬株式会社
監修: 株式会社日本航空インターナショナル
健康管理室 主席医師 医学博士 大越 裕文