学校欠席にならない平日休み「ラーケーション」広がる 親子で過ごす時間確保しやすく

小中高校生の「平日休み」を欠席扱いとしないようにする試みが始まっている。ラーニング(学び)とバケーション(休暇)を組み合わせて「ラーケーション」と呼ばれ、働き方改革で平日に休暇を取る保護者が増えたことから、親子で過ごす時間を確保しやすくしようというのが狙いだ。各地に広がりつつある一方、職種や地域によって温度差もあるため、さらなる定着に向け、専門家は「丁寧な説明が必要だ」としている。

愛知から広がり

横浜市の男性公務員(37)は昨年11月、平日に休暇を取り、地元の神社で、市立小学校に通う長女(7)の七五三の祈禱(きとう)を受けた。

「神社の予約が平日にしか取れず、娘に学校を休ませざるを得なかった。伝統行事の意味や由来なども教えたので、娘にとっては有意義な学びになったと思う」

多様な働き方が定着し、民間企業や官公庁では平日に休暇を取りやすくなっている。一方、子供たちの休日は週末に固定されたままだ。

こうした状況に柔軟に対応するため、愛知県は小中高校生に「ラーケーションの日」を創設。政令市の名古屋を除く全53市町村の賛同を得て、年3日まで平日休みを認める制度を設けた。昨年9月から自治体ごとに段階的に導入を始めて好評を得ているという。

「学び」の要素があれば行き先や過ごし方に制限はなく、事前に学校へ届け出れば、出席停止や忌引と同様に欠席扱いとしない。休んだ分の授業は自習で補う。県教育委員会の担当者は「最初は校長や保護者から野放図な欠席につながらないかなど懸念や反発があった」と振り返る。

学校関係者と意見交換会を行い、家庭での学習を目的とした休暇であることや、事前届け出の仕組みなどを説明することで理解を得られたという。「愛知発の『休み方改革』として、全国のモデルを目指したい」(県教委)

大分県別府市も昨年9月から、同様の仕組みを取り入れた。市内の小中学生を対象に平日に市外に家族旅行をする際、原則5日前までに目的地や学習目標を記した申請書を提出すれば年3日まで欠席扱いにしない。

市内では週末が繁忙期となる宿泊・飲食サービス業の従事者が11%を占め、全国平均の約2倍。市の担当者は「子供が保護者らと過ごす時間が少ないため、親の休みに子供を合わせる考えに立った」という。

沖縄県座間味村も令和6年度から同様の制度を導入する。

格差に配慮必要

大阪府立高校長や教育行政に携わった近畿大教職教育部の柴浩司教授(生徒指導論)は「家庭の教育力向上は学校にとっても望ましい。義務教育なので休まないことは大事だが、休む際に明確な理由を求めることでけじめとなる」と語る。その上で「旅行や体験学習は家庭の経済状況にも左右される。家で親と料理するなど休む理由を柔軟に認めてもよいのではないか」と呼びかける。

自動車などの製造業が盛んで柔軟に休日を取る習慣がある愛知や、観光産業が盛んな別府や座間味など地域性が影響しているのも実情だ。柴氏は「全国的に広がるかはまだ不透明だ。導入には丁寧な説明が必要となるだろう」と話した。

休み方改革も着々

平成31年の働き方改革関連法の施行や、新型コロナウイルス禍以降のテレワークの普及など、近年多様な働き方が定着し、休日の取り方も自由度が増しつつある。

そもそも、観光業など特定の業種では以前から土日祝日に休むことは難しく、総務省の令和3年社会生活基本調査によると、土曜に働いている労働者は46%、日曜は30%に上っている。

休日の多様化は今後も加速することが見込まれており、全国知事会は休暇の分散について、観光地の混雑平準化による経済効果をもたらすと指摘。「休み方改革」と銘打ち、産業界や政府に労働者の柔軟な休日の取得を後押しするよう呼びかけている。(大森貴弘)

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