参院選公示で観光地は… 客足回復は限定的「インバウンド拡大を」 神奈川・箱根

観光客で賑わう箱根湯本駅前の土産物店。活気を取り戻しつつあるが、コロナ禍前に比べると客足はまだ8割ほどという=22日午後、神奈川県箱根町(大竹直樹撮影)
観光客で賑わう箱根湯本駅前の土産物店。活気を取り戻しつつあるが、コロナ禍前に比べると客足はまだ8割ほどという=22日午後、神奈川県箱根町(大竹直樹撮影)


22日に公示された参院選では経済対策として、新型コロナウイルス禍で翻弄されてきた観光業の行く末も焦点になる。今春以降、政府が再び打ち出した観光需要喚起策の効果で、温泉地はにぎわいを取り戻しつつあるが、コロナ禍前にはほど遠く、訪日外国人の個人旅行の再開を望む声も根強い。

東京都心にも近い国内有数の温泉地、神奈川県箱根町。時折小雨のちらつく天気となったこの日、土産物店が並ぶ箱根登山鉄道箱根湯本駅周辺には、大勢の観光客の姿があった。

飲食店経営の小山槇(まき)さん(74)は「どうせ変わらないと思っているから、文句も言わないし、期待もしない」と苦笑いを浮かべた。客足が戻ってきたとはいえ、売り上げはコロナ禍前の6割程度にとどまる。財布のひもはまだ緩んでいない、というのが実感だ。

観光客で賑わう箱根湯本駅前の土産物店。活気を取り戻しつつあるが、コロナ禍前に比べると客足はまだ8割ほどという=22日午後、神奈川県箱根町(大竹直樹撮影)
観光客で賑わう箱根湯本駅前の土産物店。活気を取り戻しつつあるが、コロナ禍前に比べると客足はまだ8割ほどという=22日午後、神奈川県箱根町(大竹直樹撮影)

高級リゾート旅館「箱根藍瑠(あいる)」には、紅葉シーズンを迎える11月の予約がすでに相次いでいる。中でも目立つのが海外の個人客だ。支配人の渡辺健さん(37)は「そのころには入国制限が解除されているという期待を込めての予約だろう」と話す。

箱根町観光協会によると、コロナ禍前は観光客の15~20%が訪日外国人(インバウンド)で、多くは個人旅行だった。今月から外国人ツアー客の受け入れが再開されても効果は限定的とみられ、佐藤守専務理事(52)は「コロナ対策をしっかりとした上で、インバウンドの復活を早くしてほしい」と要望する。

一方、乗客乗員26人が死亡・行方不明となる観光船沈没事故が起きた北海道・知床。世界遺産の雄大な自然が人気を集める地元の観光業界は事故から2カ月がたった今も、大きな痛手を負ったままだ。

斜里(しゃり)町の観光遊覧船船長の男性(45)は「例年なら6月は観光客でにぎわっているが、今はさっぱりだ」とこぼす。静岡県からリゾートバイトとして訪れ、飲食店で働く女性(33)は「政治には興味がないので分からないが、知床の観光がもっと盛り上がってほしい」と訴えた。(大竹直樹)

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