日本が外国人観光客の受け入れを再開 厳しいルールは残る

アナベル・リアン、ビジネス担当記者

Visitors at the Sensoji Temple in Tokyo.

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イギリス在住のニーサ・ロネインさんは今年、初めて日本を訪れる予定だ。

16日間のツアーに3500ポンド(約60万円)強を支払った。日本では、新型コロナウイルス対策の規制のため、自由行動は認められない。

それでもロネインさんは、この旅行を心待ちにしている。

「日本は初めてですし、アジアも初めてです。楽しみです。(日本のテレビのリアリティー番組)『テラスハウス』を見て言い回しを学んでいます」

こうした人は彼女だけではない。いくつかの旅行代理店によると、日本で休暇を過ごしたいといった問い合わせが急増している。日本の厳しい規制によって、一部の旅行者はまだ同国行きを敬遠しているにもかかわらずだ。

日本は2020年以降、新型ウイルス対策として、世界でもかなり厳しい規制を実施。外国からの来訪者は、ほぼ受け入れてこなかった。10日からは約100の国や地域からの観光客を受け入れるが、なお新たな制限を設けている。

例えば、日本を旅行できるのはパッケージツアーの参加者だけだ。医療保険への加入や、屋外を含むすべての公共の場でのマスク着用が義務づけられる。

また、密閉、密集、密接の「3密」を避けることも求められる。

観光庁のガイドライン

日本の観光庁は今週、ツアー添乗員が「入国から出発まで」旅行者に同行し、マスク着用などについて注意を促すことを求めた。

同庁が7日に発表した16ページのガイドラインは、「添乗員は、ツアー参加者に対し、ツアーの場面ごとに、マスクの着脱を含め、必要な感染防止対策についてこまめな声かけや、注意喚起を行うこと」としている。

また、「屋外であっても、近い距離で会話するような場面では引き続き、マスクの着用を推奨すること」という政府見解も紹介している。

こうした状況にもかかわらず、日本を訪れることへの関心は急激に高まっていると、旅行代理店は話す。

シンガポールの「チャン・ブラザーズ・トラベル」は、日本へのツアー50組の予約を受け付けたと発表した。各組には30人ほどが参加するという。

同社の広報担当者ジェレマイア・ウォンさんは、日本の受け入れ再開が発表されて以来、問い合わせが「飛躍的に増えている」とBBCに話した。

「過去2年かそれ以上において失われた時間を穴埋めしようと、旅行者は待ち望んだ休暇を取るのをためらっていません」

だが、パンデミック後初となる日本へのツアーを、いつ実施できるかはわからないという。「旅行者全員に(中略)観光ビザが求められるため、最も早くて7月中旬以降の出発になる可能性があります」。

「イントレピッド・トラベル」の最高幹部のザラ・ベンチェイクさんは、「日本行きの需要はたまりにたまっている」と述べた。

彼女の会社は、富士山などの人気観光地を巡るツアーを8月から再開したい考えだ。しかし、まだ日本の当局の認可を得ている途中だという。

Mount Fuji is Japan's highest mountain at 3,776 meters.

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画像説明, 富士山は代表的な観光地だ

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日本は過去2年間、新型ウイルスの感染拡大を食い止めるため、大多数の外国人観光客の入国を禁止してきた。昨年は延期となった2020年東京オリンピックが開催されたが、外国からの観客は受け入れなかった。

日本が外国人の国内居住者と出張者を対象に渡航制限を緩和したのは、今年に入ってのことだった。

先月になって、日本は1日あたりの外国人入国者の上限を、それまでの2倍の2万人にすると発表した。

ドイツ証券の小山賢太郎チーフエコノミストは、この「控えめな受け入れ再開戦略」が、世界3位の日本経済に大きな利益をもたらすことにはならないだろうとの見方を示した。

「政府の対応はかなり遅れています。高齢化が進む日本では、感染に対する恐れが他の国よりも強くあります」

パンデミック前の日本では、観光は一大ビジネスだった。2019年の外国人観光客は、過去最高の3190万人に上った。それが昨年は、25万人を下回った。

観光業の本格回復は

かつて旅行先として人気が高かったこの国の観光産業は、回復まではまだかなりの道のりがある。

オーストラリア在住のラド・サパニーさんは、来月予定していた日本行きを取りやめたとBBCに語った。規制のためだ。

「パッケージツアーに興味はありません。私たちが望む旅の方法ではないんです」

日本への旅行だけを取り扱う旅行会社「TokudAw」の経営者ワンピン・オーさんは、毎日2〜3件の問い合わせはあるが、予約には至っていないと述べた。

彼女は、「まだ予約の確定はありません。決心を固める人がいないんです」と言い、こう付け加えた。

「よく聞くのが、『モルモットになるのはごめんだ』という言葉です」