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アジア太平洋で航空券販売数が増加、インドは2019年比8割まで回復

2022.04.05

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スペインの旅行調査会社フォワードキーズ(ForwardKeys)の最新のレポートによると、ここまで北中米、アフリカで海外旅行者が増える傾向にあったが、世界でもっとも厳しい旅行制限の影響で旅行や観光面で影響を受けていたアジア太平洋地域(APAC)についても、規制緩和により1月後半より旅行者が徐々に増えはじめていることが分かった。
(図出典:ForwardKeys)

 

世界の旅行者数、アメリカ大陸は目を見張る回復ぶり

下の図は2022年第1四半期(3月3日現在)の世界の旅行者数(国際観光客到着数)を2019年同期と比較したもの。世界全体では2019年同期比59%減だが、規制緩和が進むアメリカ大陸では、同39%減まで回復してきており、なかでもラテンアメリカとカリブ海は26%減ともっとも回復が進んでいる。さらに、アフリカ・中東も同41%減と健闘しており、欧州は同53%減だ。アジア太平洋は最も回復が遅く、同86%減となっている。

 

依然として、アジア太平洋地域の回復は遅れているものの、2022年に入って、東アジアを除くアジアやオセアニアの国々で入国後の検疫不要などの規制緩和が進んでいる。そのなかも、特に回復が著しいのがインドだ。下の航空券の販売数の推移のグラフを見ると、インド(グラフの緑色)は2022年1月中旬より徐々にその数を伸ばしており、3月5日の週は、2019年の水準の80%まで回復している。また、太平洋の島、フィジー(オレンジ色)は同61%まで回復、フィリピン(水色)は同48%、シンガポール(黄色)同43%、オーストラリア(紫色)が同38%となっている。

 

ForwardKeysのマーケットアナリスト、ナンシー・ダイ氏はこの傾向について、「インドは2022年の入国緩和計画を事前に発表していたので多くの関心を集めたのだろう。一方、フィジーはレジャーアイランドであることがこの時期の回復に有利に働いたと思われる。大都市などよりも人混みの少ない場所のほうが安心・安全に思えるからだ。多様なアウトドアアクティビティがあるのも利点だ」と話した。

 

オーストラリアのアウトバンドに注目

アジア太平洋地域を起点としたアウトバウンド旅行で注目されているのは、オーストラリアだ。

たとえば、オーストラリアからインドへの3月5日の週の旅行者数は改善しており、2019年同期よりも16%増となっている。オーストラリアでのチケット販売数は2月初めに急上昇したが、これはインドが入国後の隔離を撤廃、オーストラリアを含むカテゴリーAの国はワクチン接種をしていれば入国できるようにしたためだ。また、欧米の市場からもインドへの旅行者は増えており、アメリカからは2019年同期比10%増、アイルランドは同4%増になっている。

また、下のグラフにあるように、手つかずの自然とフレンドリーな地元住民で知られる太平洋のパラダイス、フィジーもオーストラリアからの4月、6月、9月の予約が2019年同月を上回る勢いだ。

ナンシー・ダイ氏は、「今年の夏は、これまでの家族や個人旅行者よりも、カップルや6人以上のグループ旅行が多いということも我々のデータからわかっている」と話しており、従来と旅のスタイルが変化している可能性を指摘している。

 

旅行者行動の変化とビッグデータの役割

上の例にもあるように、旅行者行動の変化といったリアルタイムのトレンドを知ること、そして有用なデータを自由に使えることの重要性をダイ氏は強調する。

「APACの政府や旅行先の多くは、自国への旅行がすぐに再開されるとは思えないため、保護的な旅行規則や国境閉鎖を続けているかもしれない。だが、メキシコやギリシャ、イギリスといったデスティネーションやそこでの旅行戦略が示すように、データと明確な旅行規則があれば、安全かつ健全に旅行を再開することは可能だ」

また、オーストラリアを例にとると、現時点でオーストラリアを訪れる外国人旅行者の総数は少ないかもしれないが、ForwardKeysのデータでは、2022年のプレミアムキャビンクラスの到着者数が2019年に比べて14ポイント増加していることが分かっている。つまり、航空運賃により多くを払う旅行者が増えているということだ。これは、旅行の再開が富裕層からという大方の予想にも合致している。

こうしたデータをもとに、旅行再開の戦略を練ること、それがAPACの国々にはなによりも求められることとレポートは結んでいる。

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