21年の訪日客、過去最少24万人 入国規制が足かせ
新型コロナウイルス禍の影響で日本を訪れる外国人数が激減している。日本政府観光局(JNTO)が19日発表した2021年の訪日客数は24万5900人で、コロナ前の19年比で99%減と過去最少に落ち込んだ。政府が厳しく入国を制限しているためで、「30年までに6000万人」に増やすという目標からは遠のいたままだ。
訪日客数は19年に過去最高の3188万人を記録したものの、20年に411万人に急減。21年も減少傾向は止まらず、20年比で94%減った。足元では感染力の強い変異型「オミクロン型」の感染が広がる。観光庁の和田浩一長官は19日の記者会見で、新型コロナの影響によって「国際的に観光需要が蒸発した」と振り返った。
近畿日本ツーリストなどを傘下にもつKNT-CTホールディングスの米田昭正社長は「22年はインバウンドも海外旅行も見込めない厳しい状況が続く」と身構える。
「訪日客蒸発」の最大の要因は日本の入国制限だ。政府は新型コロナの水際対策として、20年末以降は原則としてすべての国・地域を対象に新規入国を停止。観光目的では入国できない状況が続く。
21年11月にはビジネス目的の短期滞在や留学生、技能実習生を対象に新規入国を認めるなど規制緩和にカジを切った。だがオミクロン型の流行で再び水際対策が強化された。
旅行業界は苦境にあえいでいる。東京商工リサーチによると21年の宿泊業の倒産件数は86件だった。2年ぶりに減少したものの新型コロナ関連の倒産が47件と過半数を占め、観光需要の低迷が経営難に拍車をかけている。
国土交通省の21年11月時点の調査では、対象の宿泊施設の約4割は22年1月の売上高がコロナ前の19年同月比で50%以下になると予測する。日本旅行業協会の高橋広行会長は「感染が落ち着いている国に限った安全な形での往来再開などを検討してもらいたい」と規制緩和を訴える。
関係者が頼みの綱としていた国内旅行の需要喚起策「Go To トラベル」も再開のメドが立たない。政府は1月下旬にも再開を目指していたが、コロナの感染再拡大を受けて慎重姿勢に転じた。事業を所管する斉藤鉄夫国交相は7日、「感染状況が落ち着いていることが(再開の)大前提になる」と強調した。
航空業界も厳しい経営環境が続いている。「コロナ禍は想像以上に長い。国際線の需要は21年12月もコロナ前の1割程度にとどまる」。ANAホールディングスの片野坂真哉社長は1月にこう語った。
航空各社は国際線の旅客需要は22年3月末にコロナ前の3~4割程度まで戻るとの見通しを示していたが、想定の見直しが避けられない。日本航空(JAL)の赤坂祐二社長は「(回復は)オミクロン型次第だ。海外の状況はなかなか見通せない」と話す。
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2023年5月8日に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行しました。関連ニュースをこちらでまとめてお読みいただけます。
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