世界遺産のシンボル 富岡製糸場の煙突守って 保存費8000万円 寄付呼び掛け

2022年1月7日 07時58分

劣化が進み亀裂が目立つ煙突

 富岡市の世界遺産「富岡製糸場」のシンボル的存在の煙突が劣化して倒壊の恐れがあるため、市は保存修理費用をクラウドファンディング(CF)で募っている。新型コロナウイルスの感染拡大で見学料収入が激減して費用の捻出が難しく、CFで資金調達に挑む。目標額は八千万円。確保でき次第、事業に着手する。(安永陽祐)
 市富岡製糸場課によると、煙突は高さ三七・五メートル、直径二・五メートルの鉄筋コンクリート造。ボイラーの排煙設備として製糸工場に不可欠な煙突は四代目で、築八十年以上が経過している。風雨にさらされてコンクリートに亀裂が入り、鉄筋はさびが進むなど経年劣化している。煙突上部はコンクリートの落下防止のため、炭素繊維シートで応急処置を施している。

富岡製糸場のシンボル的存在となっている煙突=いずれも富岡市で(同市提供)

 市は煙突の保存修理工事にかかる費用の総額を三億二千万円と見込む。そのうち国と県で四分の三、市が残る四分の一を負担する予定。CFはふるさと納税制度を活用し、専用サイト「ふるさとチョイス」で一口一万円から、三月十八日まで受け付ける。
 返礼品として、国宝「西置繭所」の保存整備事業の際に製作した製糸場の歴史などをまとめた書籍「富岡製糸場−継承される革新の歴史」を贈る。十万円以上寄付した希望者には、煙突近くに設置予定の銘板に名前を掲示する。
 二〇二〇年度の入場者数はコロナ禍の影響で前年度から六割減少。見学料収入などを積み立てた基金は本年度で底を突く見通しで、厳しい財政運営を迫られている。煙突の周辺には、ともに国宝の繰糸所や東置繭所などの貴重な文化財もある。市は「大規模な地震や竜巻などの突風で倒壊の可能性がある」とみており、倒壊すれば文化財や観光客を巻き込む恐れもある。
 榎本義法市長は「コロナで厳しい状況。たくさんの方の協力をいただきたい」と呼び掛けている。

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