コロナで大打撃の観光業界 温泉地の苦悩続く

前田基行
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 全国有数の温泉県・群馬。新型コロナウイルスの感染拡大で大打撃を受けたのが、観光業界だ。緊急事態宣言が明け、客足は徐々に戻りつつあるが、感染再拡大に気をもむ状況は続いている。コロナで傷んだ観光業をどう立て直すのか。

 10月中旬の週末、紅葉が始まった草津温泉草津町)は観光客でにぎわっていた。「団体客も入り始めました」と草津温泉観光協会の担当者も安堵(あんど)の表情。「ホテル一井」の女将で、同協会長を務める市川薫さんは「暗いトンネルに、ようやく光が差し込んできました」と表情を緩ませた。

 観光業界はこの1年半あまり、コロナ禍に振り回されっぱなしだった。県は5日、2020年の観光入り込み客数を公表=表。県内の主要な温泉地は軒並み前年割れで、報告書には厳しい数字が並ぶ。県内全体の観光消費額は1784億円で、前年比37・3%減と大きく落ち込んだ。

 それだけに、緊急事態宣言が解除され、10月に入って客足が戻りつつある状況に、伊香保温泉旅館協同組合(渋川市)の高橋秀樹理事長は「今年は年末年始に始まり、GW、夏の旅行シーズンと全部ダメだったので、正直ホッとしている」と胸をなで下ろす。

 とはいえ、手放しで喜べる状況ではまだまだないのが実情だ。

 「昨年は第3波で年末に一気に冷え込んだ。いつまた感染拡大が起きないか、現場は疑心暗鬼」(四万温泉協会)、「本来ならプロモーションをどんどんかけてお客さんを呼びたいが、まだそのような状況ではない」(草津温泉観光協会)と、感染再拡大への不安はぬぐえないままだ。

 客室数227の万座プリンスホテル(嬬恋村)では、客室の稼働率を最大7割に抑えて客を迎えている。担当者は「密になると、お客さんが不安になる。この対応は、しばらく続くと思う」と話す。

 コロナ前であれば年間約110万人が泊まる伊香保温泉だが、昨年は約67万人に激減。今年は9月の時点で約31万人だ。渋川伊香保温泉観光協会の伊藤信明常務理事は「今年は50万人を切る可能性がある」。四万温泉(中之条町)も同様で「今年は過去最低になる可能性が高い」(四万温泉協会)という。

 このため、15日に始まった群馬県の観光支援策「愛郷ぐんまプロジェクト第3弾」に続き、政府の支援策「Go To トラベル」の再開を求める声が多い。みなかみ町観光協会の山賀晃男専務理事は「以前と違ってワクチンの接種も進み、だいぶ安心できる状況になってきた。国にはGo To トラベルを早く再開してほしい」と期待する。

 草津温泉観光協会には旅館やホテルのほか、飲食店など約350社が加盟するが、コロナ倒産は1件もなかった。市川会長は「給付金など、国の支援のおかげ」という。「ただ、この先1、2年が正念場。観光は宿泊や飲食、物産、農業などすそ野が広い業界。地域の雇用を守るためにも、企業が立ち直るまでの支援を国にはお願いしたい」(前田基行)

     ◇

20年の県内温泉地の観光入り込み客数

草津温泉 ▲28・6%

水上温泉郷 ▲40・1%

伊香保温泉 ▲34・3%

四万温泉 ▲28・8%

万座温泉 ▲44・1%

(▲はマイナス)

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