ワクチン接種の進展に合わせてウィズコロナへと方針を切り替え、入国制限の緩和を進める国が増えるなか、そうした国々での旅行需要回復を伝える報道が増えている。

英国の旅行業界メディアTTGがこのほど実施した調査によると、回答した旅行会社の97%が過去2週間に新規の問い合わせを受けており、半年間で最も高い水準であったその前の2週間を更に上回った。実際の予約を受けた旅行会社も87%となり、前の期間を2ポイント上回ったという。

問い合わせと予約の件数も増加しており、問い合わせでは平均23件が28件となったほか、予約数も14件が19件と増えている。

動向として、長距離デスティネーションの人気が回復傾向にあり、カリブ海やインド洋、中東への関心が大幅に増加。また、入国制限の緩和が発表された米国やカナダへの予約も急増。米国は実際には再開のタイミングが未発表であるため、詳細が明らかになれば更に増える可能性もあると期待されているという。このほか、クルーズ予約も前期間から19ポイントも増加している。

また、ウィズコロナへの転換をリードするシンガポールでも、双方向で隔離を免除する「ワクチン接種完了トラベルレーン(Vaccinated Travel Lane、VTL)」で予約が増加。Travel Weeklyによると、ForwardKeysのデータでシンガポールからドイツへの航空券予約が2019年比93%まで回復。また、シンガポールからドイツを訪れる旅行者の76%はレジャー目的で、2019年の43%から大きく増加しているほか、平均滞在日数も13日から15日へ伸びているという。

旅行の手段として旅行会社のツアーの人気も高まっており、これまでは個人旅行を好んでいたような消費者が、シンガポールとドイツの両方に緊急対応チームを置くなど体制を整えている旅行会社のサービスを選ぶ動きが顕在化しているという。

ハンギョレ新聞によると韓国でも海外旅行需要が伸長しており、サイパンへのツアーは年末まで完売状態となってオーバーブックまで発生する自体となるなど旅行会社の業績も回復が顕著。

このほか、Caribbean Journalによるとワクチン未接種での入国も認めているドミニカ共和国では、9月の外国人訪問者数が過去最高を更新。1月からの累計もすでに2019年を上回っており、残る3ヶ月の航空券予約も2019年比で12%から20%高い状況となっている。また、こちらでも滞在日数の増加が確認されている。

これに対して日本ではようやく14日間の隔離が10日間になった程度で、慎重すぎる対応が続いているところ。制限が緩和されれば諸外国と同じような活発な動きも期待できるものの、累積需要(pent-up demand)にも限りはあり、受け入れ再開を躊躇すればするほど外国人旅行者は他のデスティネーションに流れていく。

観光産業の回復の遅れは更なる倒産や離職にも繋がり、国策である観光立国も遠のいていくだろう。一刻も早くワクチン接種を条件とした隔離の更なる短縮、撤廃を求めたい。