新型コロナウイルスの影響で、修学旅行生らの平和ガイドを担ってきた沖縄県内最大の平和ガイド団体が、苦境に立たされている。「県観光ボランティアガイド友の会」の本年度の受け入れは、4月の4校が最後。280校がキャンセルになった。緊急事態宣言が明けた10月も、当初90校の予約がキャンセル続出で3校のみにとどまる。「来年4月からの運営にめどが立たない」と、解散の危機を訴え、県に財政支援を求めている。(社会部・大城志織)
■10月もキャンセル
宣言の解除が決まり、一夜明けた9月29日。豊見城市内にある事務局には、修学旅行がキャンセルになったとの連絡が続々と届いていた。高嶺典子事務局長(72)は「10月もほとんどがキャンセルになり、残っているのは3校だけ。宣言解除で期待していたが…」と声を落とす。
背景には、修学旅行生が旅先で発熱など体調不良になった時に備え、親が迎えに行ける場所に方面変更する傾向がある。「飛行機に乗る沖縄は敬遠されがち。しばらくはこれが続くのでは」と懸念する。
会は1997年に発足。沖縄戦で住民らが避難したガマを主に案内し、平和の尊さを訴えている。コロナ前の2019年度は1070校、16万人余を受け入れ、延べ3420人のガイドを派遣した。
ただ、コロナが広がり始めた20年度は66校、約5千人と大幅に減少。本年度は4月に4校を受け入れたのが最後で、5~6月はリモートでの講話が数件。4~6月で約280校の予約がキャンセルになった。
■運営のめど立たず
会は任意団体で県から補助金はない。運営費は、修学旅行で訪れる学校などからガイドが受け取る「交通費協力金」の一部で支えられている。
だが、19年度に約300万円だった収入が、20年度はわずか30万円という。人員削減や会員からの借金、寄付金で本年度の運営費をどうにか工面したが、来年4月以降は事務所の光熱費や機材のリース代すら払えるめども立っていない。
「借金もして寄付を集めたがこれ以上どうしたらいいの。瀬戸際に追い詰められている」。9月末、沖縄観光コンベンションビューローに窮状を訴えた。
現時点で22年度は288校から予約がある。
高嶺事務局長は「平和教育の一翼を担いながら、沖縄観光の種まきもしている。会がなくなれば、平和教育の機会が失われるだけではなく、観光業界全体の問題にもつながる」と強調する。
その上で「質を担保し、多くのガイドを派遣できるのは私たちだけ。県の公的な援助がなければ解散もあり得るが、平和学習の使命を何とか果たしたい」と支援の必要性を訴えた。