米航空需要、回復に遅れ 感染拡大とオフィス復帰延期で
【ニューヨーク=大島有美子】米国の航空需要の回復が遅れている。アメリカン航空など大手各社は9日までに7~9月期の需要や業績見通しを下方修正した。これまでは米国内の観光需要が回復をけん引してきたが、デルタ型の感染拡大で飛行機の利用を見送る人が増えたほか、企業のオフィス復帰が延期されて出張需要が戻らないことが足かせとなっている。
デルタ航空は7~9月期の売上高を2019年の同期比で30~35%減としていた当初予測について、「下限(35%減)になりそうだ」と述べた。「法人需要の回復を見込んでいたが、各社のオフィス再開の延期を受けて回復が止まっている」と説明した。アメリカン航空は7月時点で7~9月期の売上高を同20%減と予測していたが、24~28%減に引き下げた。ユナイテッド航空も同期間の提供座席数の見通しを引き下げた。
米銀バンク・オブ・アメリカが10日に公表したクレジットカードの利用動向では、航空への利用額が8月に前月比19.5%減と急減速した。宿泊施設(1.2%減)や飲食店(1.3%増)など他の分野と比べて回復の鈍さが目立つ。米運輸保安局(TSA)によると、保安検査所の通過人数は7日移動平均でみて19年比約15~20%減の水準で足踏みしている。
米航空業界団体のエアラインズ・フォー・アメリカによると米国内線の旅客数は7月以降、コロナ前と比べ1~2割減で推移する。国際線は路線によって回復の明暗が分かれる。旅行需要がけん引する米ーメキシコ路線は2割増と好調だが、太平洋路線は同9割減と大きく低迷したままだ。国境制限が緩和されてきた欧州と米国をつなぐ大西洋路線の旅客数は6月以降に増え始め、直近で6割減となっている。
米国の航空需要は国内線が主体だ。米運輸省の統計では、コロナ前の19年時点で国内線の旅客数は全体の77%を占める。コロナ下で国内線への依存度はより高まっている。各社は足元の需要見通しを引き下げたものの、中長期は強気の姿勢を崩していない。ユナイテッドは変異ウイルスについて「過去の感染拡大よりも旅客需要への影響は少なく、一時的だ」とみる。
深刻なのは航空会社や関連会社の人手不足だ。米国では52万人がコロナ前に航空業界に従事していたが、8月の雇用者数は45万人にとどまる。各社は採用活動を進めるものの、早期退職などを受け現場にまだ人が戻り切れていない。
米大手航空会社の客室乗務員は「空港によっては常に欠員状態。法定休憩時間が終わるとすぐに呼び出しがかかる」と多忙を極める。アメリカン航空のパイロット1万4000人が加入する労働組合は9日までに「我々は記録的な数の再配置に対応し、疲弊している」との通知を組合員で共有し、労働環境の改善を求め今後数週間で主要な空港でデモ活動などを展開する方針だ。需要の偏りに対応できるかが焦点となる。
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