タイ、観光再開を拡大へ 感染高止まりも規制緩和
【バンコク=村松洋兵】タイ政府は10月以降に主要観光地で外国人観光客の受け入れを順次再開する方針だ。新型コロナウイルス対策の行動制限で景気が悪化し、規制緩和によって経済再生との両立を目指す方針に転換した。ワクチン接種が遅れるなか新規感染者数は高止まりしており、さらなる感染拡大を招くリスクをはらむ。
プラユット首相は1日の国会審議で「コロナの感染状況によっては部分的になるかもしれないが、観光再開を前進させる」と述べ、7月にリゾート地プーケットで導入した外国人観光客の入国時に隔離を免除する措置を、首都バンコクや北部チェンマイに広げる考えを示した。
同日にはバンコクなどでコロナ対策の行動制限が緩和され、百貨店の営業やレストラン内での飲食が再開した。プラユット氏は夜間外出禁止や娯楽産業の営業規制といった措置も緩和を検討すると明らかにした。
タイの1日当たりの新規感染者数は足元で1万4000人前後となり、連日2万人を超えていた8月中旬に比べて減少傾向にある。だが、バンコクなどでロックダウン(都市封鎖)を開始した7月中旬は1万人前後だったため、感染状況が改善したとは言いがたい。死者数は200人前後と同国として最悪の水準が続く。
タイ政府は従来、厳しい行動制限による感染封じ込めをコロナ対策の基本としていた。規制緩和を急ぐのは経済への打撃が大きくなっているためだ。タイの国家経済社会開発委員会は8月に2021年の経済成長率予測を0.7~1.2%に下方修正した。東南アジアの主要国では政変が起きたミャンマーを除いて最低水準となる。
一方で先行して観光を再開したプーケットでは外国人観光客が伸び悩んでいる。7月1日から2カ月間の訪問者数は約2万6000人にとどまり、3カ月間で10万人としていた目標に届かないのが確実になった。タイ国内でインド型(デルタ型)の感染が急増し、欧米諸国がタイへの渡航自粛を求めているためだ。
タイ政府はワクチン接種を加速し、現在は約1割にとどまる2回接種を終えた人の割合を年末までに7割に高める計画だ。しかし、足元では軍政の流れをくむプラユット政権の退陣を求める反体制デモが再燃し、連日のように警察との衝突が起きており、外国人から旅行先として敬遠され続ける可能性もある。
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