データインバウンド
好奇心と幸福感アップをもたらす旅行、認知症リスク低下の可能性が明らかに
2021.08.06
日本で超高齢者社会への警鐘が鳴って久しい。2025年には高齢者の5人に1人が認知症になる可能性があるという推計もある。WHO(世界保健機関)による報告では、約3秒に1人が世界のどこかで新たに認知症になっている計算だという。
高齢化社会では避けて通れない認知症。そこで注目されるのが認知症になりにくい生活習慣だが、なかでも、対人関係(ほかの人とよくおつきあいをしている)や知的行動習慣(博物館へ行くなど)の重要性はよく知られている。旅行はその両方に当てはまる行動だが、実際の調査でもその傾向がみてとれることがわかった。
対人関係と知的行動習慣の促進に役立つ旅行
シニア世代のツアーを得意とするクラブツーリズムは2016年7月から、脳科学分野の世界的権威である東北大学加齢医学研究所と連携し、同研究所の「生涯健康脳」研究の一環として瀧靖之教授の指導のもと、医学的見地から調査・研究を行ってきた。クラブツーリズムの60歳前後の顧客835名を対象に実施したアンケート調査のデータを解析・研究した結果、一定の条件下の旅行における認知症リスク低下の可能性を確認したという。なお、この研究は、2021 年 3 月の学術論文雑誌「Humanities and Social Sciences Communications」に掲載された。
(1) 旅行頻度と拡散的好奇心
年に10回以上旅行に行く群は、旅行頻度が低い群より拡散的好奇心が高い
年に10回以上旅行に行く群は、旅行頻度が低い群より主観的幸福感が高い
解析によって、知的好奇心のひとつである「拡散的好奇心」(物事に対して、幅広く情報を求める性格特性)が旅行の動機となっていることが確認され、旅行を通じ認知刺激を受けることで「拡散的好奇心」が満たされ、結果として「主観的幸福度」が高まるというメカニズムが解明された。
また、旅行頻度が高まるほど「主観的幸福度」が高まる傾向にあることが分かった。
それまでの研究で「主観的幸福度」は認知症リスクを低減させる効果があることが証明されていることから、旅行によって認知症リスクを低下させる効果がある可能性が示唆されたものだ。
瀧靖之教授はこの研究について、「脳の健康を維持するための活動や習慣は、運動、食、睡眠、趣味活動など様々なことが明らかになり始めているが、個々人の興味関心や性格特性に応じた脳の健康維持活動を検討する上で、旅行という選択も大きな可能性を秘めていることが明らかになったと考える」と話している。
日本人に向けてはもちろん、一定のインバウンド層にもアピールする可能性の高い、「生涯健康脳」と旅行というテーマ、今後のツアー造成の際に考えていく余地がありそうだ。
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