使うのはプロペラ機、新LCC知ってる?来夏に向け準備

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高橋俊成
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 新潟を拠点にした新たな格安航空便の来夏就航に向けて、新会社「トキエア」(新潟市)が動いている。昨年7月に設立したベンチャー企業が、既存の国内LCC(格安航空会社)とは違う戦略を描く。新型コロナ禍の暗雲を切り裂いて、大空に飛び立つ準備を進めている。

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 トキエアが就航を計画するのは、新潟空港を拠点に、丘珠(札幌市)、仙台、中京圏関西圏をそれぞれ結ぶ4路線だ。

 新型コロナ禍の影響が深刻化する前だった2019年度の新潟空港の国内線利用客数(計約102万人)は、最多が大阪線(約56万人)、2番目が札幌線(約16万人)。需要が見込める主要路線で参入をめざす。

 各種サービスの簡素化や座席数の増加などの工夫で、大手航空会社より安い運賃で運航するのがLCCの手法。国土交通省の資料によると、国内ではANA傘下のピーチ・アビエーションと、いずれも日本航空(JAL)が出資する春秋航空日本ジェットスター・ジャパンの3社が運航している。

 3社は、成田や関西空港など国際空港を拠点にして国内だけでなく国際線も運航し、機体はジェット機を用いている。一方、トキエアは地方都市に拠点を置いて国内線に絞り、機体はプロペラ機を用いる。既存の国内LCCとは違いが際立っている。

 トキエアは、仏ATR社製の4機(70人乗りと48人乗り)をリースする予定。ジェット機より機体が小さく、例えばLCCで多く使われるエアバスA320(約180人乗り)より乗客数ははるかに少ない。速度も時速500キロ台で、同800キロ台のジェット機に劣る。航続距離も短く、国際線の運航には適さない。

 それでもプロペラ機を用いるのは、コスト削減につながる利点が大きいとみるからだ。

 空港使用にかかる「着陸料」は原則、飛行機の重量に比例するため、ジェット機より軽いプロペラ機は割安。トキエアがリースするATR社プロペラ機の着陸料は、例えばJALが新潟~大阪便などで使う小型ジェット機「Eジェット」の半額以下に収まる、とトキエアはみる。リース料もジェット機より低額なうえ、これまでの交渉で相場の2割ほど下げられそうだという。

 そして48人乗りの機体は、長さ800メートル級の短い滑走路でも離着陸が可能。この特徴を生かし、トキエアは滑走路の長さ890メートルの佐渡空港を首都圏と結ぶ定期便を就航し、観光需要の取り込みをめざしている。

 佐渡空港は13年度を最後に定期運航がない。佐渡の観光客は約60万人だった09年から10年間で10万人以上減ったが、同社は「佐渡金山」の追い風に期待する。来月にも結果が出る世界文化遺産の国内推薦候補となれば、国内21件めの登録となる見込みだ。

 すでに5月に佐渡~成田間で調査飛行も実施。約50分の飛行で成田に着くという。佐渡空港を管理する新潟県も「トキエア就航の実現性は高く、新潟と首都圏が直結できれば観光面で大きなインパクトになる」(県空港課)として、今年度までに関連経費約1億2千万円を計上し、22年度も誘導路拡幅などの工事費を予算計上する予定だ。

 佐渡線も含め、同社は将来的に全路線で年50万~60万人の利用を見込む。同県加茂市出身で、JALなどで勤務経験のある長谷川政樹社長は「LCCとして旅客開拓の余地は十分。成田まで50分。気軽に旅行に行け、気軽に来られる新潟県にしたい」と話す。

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