ロンドン・ヒースロー空港、ワクチン完了者の入国手続き迅速化を試験
英航空大手2社はロンドン・ヒースロー空港で今週末から、新型コロナウイルスのワクチン接種を完了した到着客について、入国手続きを試験的に迅速化する。
計画では、ブリティッシュ・エアウェイズとヴァージン・アトランティックは、4つの飛行ルートで外国からヒースロー空港に到着する乗客に、搭乗前にワクチン接種証明をアップロードし提示するよう認める。
接種証明をアップロードした乗客は、同空港に到着後、専用レーンで入国手続きを進めることができる。
政府は、乗客のワクチン接種の状態について、航空会社や空港が到着前に確認することで、英入国管理当局の負担を減らしたい考えだ。
週末から試験を実施
入国の迅速化を試験的に実施するのは、ギリシャ・アテネ、アメリカ・ロサンゼルス、同ニューヨーク、ジャマイカ・モンテゴベイの4地点から特定の便で到着し、ワクチン接種を完了している乗客。
国際的に認められている、英国民保健サービス(NHS)のアプリ、米疾病対策センター(CDC)のカード、米各州および欧州連合(EU)のデジタル証明書などを有効な書類として扱う。
ヒースロー空港のジョン・ホランド=ケイ最高経営責任者は、「今週末に始まる試験で、乗客のワクチン2回接種を、搭乗前に私たちが安全に100%確認できることを示せるだろう」と述べた。
ブリティッシュ・エアウェイズとヴァージン・アトランティックのトップはそれぞれ、試験への期待と自信を表明した。
両者は共同声明も発表。イギリスは「ワクチン計画を成功させ世界をリードしてきた」ものの、ワクチン接種完了者を隔離せず入国させている国が得ている「経済的および社会的利益を獲得できていない」と訴えた。
隔離の免除は
英航空業界は、新型ウイルスの感染リスクが比較的低い国(英政府が「アンバー(黄色)」に分類している国)からイギリスに入国する乗客について、隔離措置を免除するよう求めている。
「黄色」に分類されている国には、イギリス人の旅行先として人気が高い国が多く含まれている。現在はイギリス人がそれらの国に旅行した場合、帰国時に最長10日間の隔離が義務づけられている。
黄色リストには、日本も含まれている。
サジド・ジャヴィド保健相は今週、「黄色に分類された国から帰国するワクチン接種完了者の隔離」を終わらせることについて、グラント・シャップス運輸相が近く議会に報告するだろうと述べた。
シャップス運輸相は今週中に、隔離に関する計画を発表する予定だ。
専門家から懸念も
ただ、イギリスではこのところ、新型ウイルスの感染者が増え続けている。ジャヴィド保健相は、1日あたりの新規感染者がこの夏、10万人にまで増える可能性があるとしている。
それでもボリス・ジョンソン首相は5日、イングランドで実施してきたロックダウンなどの感染対策を、今月19日でほぼすべて終了する方針を表明した。
政府が制限解除に積極的になる中、保健衛生の専門家らは、ワクチンが100%有効というわけではないと強調している。
自主隔離ルールは延長
一方、イングランドのワクチン接種完了者を対象とした自主隔離ルールの変更が8月16日に延期され、野党・労働党の議員や企業などが懸念を示している。
政府の計画では、イングランドでワクチンを2回接種した人は同日以降、濃厚接触者の中から陽性と判定された人が出ても、自主隔離しなくてもよくなる。
飲食業界団体「UKホスピタリティー」は、そうした変更は遅すぎると話した。そして、パブやレストランのスタッフに「不必要な」自主隔離を強いる現行制度によって「殺戮(さつりく)のような悲惨な状況」が起きているとした。
イギリス政府によると、7日に確認された新規感染者は3万2548人。7日間で19万2902人となり、その前の7日間から42.8%増えた。陽性判定から28日以内に死亡した人は33人、7日間で161人となり、その前の7日間から42.5%増えた。