北海道新幹線延伸 開業時期の大幅遅れ 有識者会議が報告書提出

北海道新幹線の札幌への延伸について、国の有識者会議は、開業時期の見通しを従来の目標から大幅に遅れる「2038年度末」としたうえで、数年単位でさらに遅れる可能性もあるとする報告書を国に提出しました。

北海道新幹線の新函館北斗から札幌までの開業時期を議論してきた国土交通省の有識者会議は、最終的な報告書をまとめ、14日、森地茂座長が中野国土交通大臣に手渡しました。

延伸工事では、北斗市やニセコ町などのトンネル工事が難航していることから、報告書は開業時期の見通しについて、従来の2030年度末の目標から「2038年度末」に大幅に遅れるとしています。

そのうえで、トンネル工事が想定以上に難航した場合、さらに数年単位で遅れる可能性もあるとして、トンネルの貫通のめどが立った段階で改めて開業時期を定めることが適切だとしています。

北海道新幹線の札幌への延伸で地域の活性化につながる期待が高まる中、開業時期の大幅な遅れによる沿線自治体のまちづくりへの影響が避けられない見通しとなっています。

札幌市民の反応は

札幌延伸が従来の目標から大幅に遅れることについて、札幌市内で聞きました。

白石区の19歳の大学生の女性は「新幹線が通ると家族や友達と遠出もできると思っていたので、楽しみが減ると思います。2038年度末だと北海道にいるかどうかわらかないので、使う機会が減ると思います」と話していました。

豊平区の30代の会社員の男性は「残念だが、札幌延伸が中止になっていないだけ、いいかなと思います。札幌から函館に車で行くのは時間もかかり、新幹線ができたらいいと思っていたので、実現してほしい」と話していました。

鈴木知事 “影響を最小限にとどめていく必要”

鈴木知事は14日の道議会で「長年、オール北海道で取り組んできたことを踏まえると大変遺憾だ。沿線自治体のまちづくりや民間投資、JR北海道の経営など、さまざまな分野にわたって多大な影響が懸念されることから、最小限にとどめていく必要がある」と述べました。

そのうえで、来月上旬にも沿線自治体や地元の経済界などとともに、国に対して緊急の要望を行う考えを示しました。

札幌 秋元市長 “影響小さくするための方策を求めていく”

札幌市の秋元市長は14日の会見で「2030年度末の開業に向けて、自治体はまちづくりを進め、民間企業は投資を行い市民も期待してきた。仮に大幅に開業時期がずれることになれば経済効果などが先送りされ、民間投資がストップする可能性もあり、札幌のみならず沿線自治体にとって大変大きな問題だ」と述べました。

そのうえで「利益を得られる時期が先延ばしになるので、損害賠償とは言わないまでも損失の発生が考えられる。市として影響を検証するとともに、マイナスの影響を小さくするための方策を国に求めていく必要がある」と述べました。

八雲町長 “国は財政的負担の軽減を”

札幌延伸に伴って、新駅の建設工事が進められている北海道八雲町の岩村克詔町長は「もっと早い段階で延期について教えてほしかった。小さい町ながらこれまで新幹線に関して協力をしてきた。『地元はどう考えていますか、どういう思いですか』と聞いてほしかった」と述べ、開業時期が遅れることについて国からの説明が不十分だという認識を示しました。

そのうえで町長は、新幹線の駅の予定地周辺で進められている観光施設などの建設計画について、新年度以降、変更が必要になるという見通しを示したうえで、「工事が長くなればそれだけ町が負担する金が増えていく。国はそうした財政的負担が軽減されるよう対応してほしい」と述べました。

有識者会議 座長「工事は大変難しい状況 未知のもの」

有識者会議の森地茂座長は「今回のトンネル工事は大変難しい状況にあり、私も初めてみるくらい本当に未知のものだった。今まで新幹線をつくったところは、多くが先に高速道路が通っていたりと情報量が異なり、今回あれだけの大きな岩が出てくることなどは想定外だった。これから掘削する場所は、まだ分からないことがたくさんあるが、分かるかぎりの情報を使って技術的な検討をするのがわれわれにできることだった」と述べ、開業時期を見通す難しさをにじませました。

そのうえで、記者団から2040年代の開業も視野に入れざるをえないか問われたのに対し、「可能性はそういうことだ」と述べました。

鉄道・運輸機構 理事長「完成開業に向け努力したい」

建設主体の鉄道・運輸機構の藤田耕三理事長は記者団に対し、「完成開業が大幅に遅れる見通しとなったことを、建設を担う主体として心からおわび申し上げたい。また、具体的な開業時期をお示しできる状況に至っていないことについても大変心苦しく思っている。沿線の皆様とも協力しながら一日も早い完成開業に向けて、最大限、努力してまいりたい」と述べました。

また、完成時期の見通しがたつタイミングについては、「あくまで現時点での想定になりますが、3年ないし5年程度たてば、一定の貫通のめどが立つ状況に至れるのではないか」と述べました。

経済連合会 会長 “一日も早い延伸開業を目指してほしい”

道経連=北海道経済連合会の藤井裕会長は「新たな開業時期の見通しは大変厳しいものと言わざるをえません。札幌延伸開業に向けた工事は、大変厳しい自然環境下で行われていることは十分理解しておりますが、まずは、安全を最優先に作業を進めたうえで、工期短縮に向けた有効な対策を講じ、一日も早い北海道新幹線札幌延伸開業を目指していただきたい」とコメントしています。

商工会議所 会頭 “逸失利益は甚大”

北海道商工会議所連合会の岩田圭剛会頭は「『一日も早い開業』を訴えてきた者として、今回の発表は極めて残念だ。開業に向けて、駅前周辺の再開発やまちづくりを進めてきた沿線地域への影響も大きく、現行よりも8年近く遅れることによる逸失利益は甚大で広範囲に及ぶ。JR北海道の経営自立に向けた取り組みも大きく後退することが懸念される。商工会議所としても引き続き、沿線自治体や関係機関と連携し開業効果の最大化に向け、積極的に取り組んでいく」とコメントしています。