さっぽろ雪まつり、4年ぶり完全復活 200万人回復へコロナの影は

日浦統
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 2月4日から「さっぽろ雪まつり」が8日間の日程で開幕する。コロナの5類移行後初となる今年は4年ぶりにつどーむ会場が復活し、大通、すすきのと合わせた3会場での開催。コロナの新規感染者が増える中、名物の飲食ブースは、出店数を減らすなど感染防止策を講じる。集客については、コロナの全道感染拡大の端緒となった中国人観光客の戻りが鈍く、完全復活とまではいかなそうだ。

 2020年1月28日。

 道内で確認された感染者第1号は、湖北省武漢市から来道して観光していた40代女性だった。その3日後に雪まつりが開幕。12日間で202万1千人が訪れた。札幌観光協会は、当時の感染対策について「飲食ブースのアルコール消毒や店員のマスク着用義務、ポスター掲示……できる限りのことはやった」と振り返る。しかしそのかいなく、雪まつりは、全国に先がけて道内感染が広がるきっかけとなった。後に政府の専門家会議が「雪まつりのころに道内で多数の感染が起こった蓋然(がいぜん)性が高い」と指摘したほか、特に「換気の悪い密閉空間、多くの人が密集、近距離の会話という3条件が重なった」と分析した。

 道内感染の3、5例目は雪まつり会場での感染だった。2人の40代男性が大通2丁目会場のプレハブ小屋で事務作業をしていて感染。運営スタッフの詰め所や暖をとるための休憩所などは「三密」状態が発生しやすかったと指摘された。

 あれから4年。道内ではコロナの新規感染者数がじわじわ増えている。1月15~21日の道内の新規感染者数は定点あたり10・78人と高水準だ。ゲノム解析によると、オミクロン株の変異株「JN.1」が増えて最近は30%を超え、それまで優位だった「EG.5」の割合を上回った。「JN.1」は重症化しやすいデータはない半面、免疫を回避する能力が高いとされる。今後、置き換わりが進めば、感染者が増える可能性がある。

 同じ轍(てつ)を踏まぬため、今年の雪まつりは飲食ブースの出店数を制限する。4年前は大通会場で計95店で、なかでも6丁目は食の広場と題して26店が集中していた。今年は丁目ごとに最大で6店程度とし、「三密」を回避する。特に感染症対策だけでなく「昨年の来場者に『ゴミが少なくてよい』と好評で既存の飲食店からも『まつり期間中来店者が増えた』と歓迎されたため」(協会)という。

 雪まつりは道内で最も有名で集客力のある冬季イベントだ。3年ぶりのリアル開催となった昨年の来場者は175万人だったが、今年は例年並みの200万人台復活への期待は大きい。足元の人出は好調だ。北海道観光振興機構の調べによると、昨年10月の来道者数は118万人超で、単月では初めてコロナ前の19年を上回った。昨秋以降、大通公園で開かれたオータムフェストは延べ238万人、冬のミュンヘン・クリスマス市は同169万人が訪れて、過去最多を記録するなど盛況が続く。

 雪まつり完全復活のカギを握るとされるのは中国人観光客だ。今年の春節(旧正月)は2月10日から17日までの8連休。前後の40日間は、過去最多の延べ90億人が移動すると中国政府は推計する。来道者増への期待は高まるが、昨年9月に団体旅行が解禁されてからも中国人の戻りは鈍い。昨年10月の来道者数は3万4560人。トップの台湾の3割弱に過ぎず、国・地域別でも韓国、香港に次いで4位にとどまっている。

 日本銀行の岡本宜樹・札幌支店長は26日の会見で、この現状について「中国との直行便が増えず、団体旅行客が本格回復していないのは全国的な傾向。道内で改善する要素は今のところあまりない」と指摘した。(日浦統)

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