人手不足の観光業界が合同就職面接会 急速に需要回復 東京

コロナ禍から旅行需要が急速に回復する中、人手不足が続く観光業界の企業が参加した、合同の就職面接会が都内で開かれました。人手が足りずに、一部の客室が稼働できないというホテルも出ていて、企業の担当者は、仕事を求めて訪れた人に働きやすさなどをアピールしていました。

この就職面接会は、観光業界で人手不足に悩む企業が相次いでいるとして、東京都が緊急に開いたもので、初日の8日は、バス会社やホテルの運営会社など30社余りが参加しました。

会場には、就職活動中の大学生や転職を希望する人など大勢の人が訪れ、企業ごとに設けられたブースで仕事の内容や賃金などの待遇について説明を受けていました。

中には、在宅勤務が可能であることなど働きやすさをアピールする企業もありました。

東京都によりますと、観光業界では人手不足による影響が広がっていて、参加した企業の中には、客室をおよそ7割しか稼働できないというホテルの運営会社も出ています。

東京や京都などでホテルを運営する会社の藤岡武志取締役総支配人は「宿泊予約は増加傾向にありますが、スタッフが不足しているので、予約を制限しながら営業をしています。ホテルの仕事に関心がある人は、ぜひ応募してほしい」と話していました。

この就職面接会は、9日も東京 文京区で開かれます。

人手確保で賃上げの動きも

ホテルや旅館などの宿泊施設では人手不足が深刻となっています。

民間の信用調査会社「帝国データバンク」は、ことし1月、企業の人手不足について、51の業種、全国のおよそ2万7000社を対象に調査を行い、42.8%に当たる1万1000社余りから回答がありました。

それによりますと、「旅館・ホテル」では、
▽「正社員が不足」と答えた企業の割合は77.8%
▽「非正規社員が不足」と答えた企業の割合は81.1%に上りました。

いずれも、全業種の中で最も高くなりました。

また、いずれの割合も2007年の調査開始以降、最も高くなっています。

こうした中、ホテルなどでは、企業がアルバイトやパートを募集する際の時給も上昇しています。

人材サービス大手のリクルートの調査では、首都圏1都3県の、1月の全業種のアルバイトやパートの平均時給は1182円と、去年の同じ月と比べて2.4%増えました。

業種別では、「ホテルスタッフ」が1223円と、金額で80円、率にして7%の上昇と、全業種の伸びを大きく上回っています。

宿泊業界では人手を確保するために、賃上げの動きが広がっているとみられます。

休日日数や手当など待遇面アピールする企業も

参加した企業の中には、休日の日数や手当など待遇面をアピールして人材確保につなげようとしているところもありました。

このうち、ホテル事業などを展開する企業では、国内旅行の需要が回復し外国人観光客も多くなる中で、ホテルの客室が満室になる日も多くなっているといいます。

しかし、新型コロナの感染が拡大していた時期に採用活動を一時取りやめた影響で、人手が不足する状況になっています。

ホテル業界では、多くの企業が同じような事情を抱えていて、人材の取り合いになっているということです。

この企業は8日の面接会で、ブースに「年間休日112日」や「残業代は1分単位で支給」というはり紙をして休日の日数や手当など待遇面をアピールしていました。

この企業では来年春に入社する大卒の初任給を2万円引き上げるなど、さらに待遇改善に取り組んで人材の確保につなげていきたいとしています。

「東急リゾーツ&ステイ」の採用担当者は「仕事とプライベートを両立したいというニーズも高いので、さまざまな制度をそろえて働きやすい環境になっていることをしっかりアピールしたい」と話していました。