コロナ禍で欧米では旅行会社を利用する旅行者が増えていることが2021年の春ごろから報じられはじめたが、この波は引きも切らずで現在もリベンジ需要が旅行業ビジネスに流入している様子。

例えば英国の業界メディアTTGの記事では、1月の旅行会社が90年代のような多忙さで顧客が店舗に列を作って待つほどであったことを紹介。多くの会社が過去最高の実績を報告しているといい、ある会社の幹部は90年代中盤以降では見ることのなかったほどの活況と説明。

そしてこれも以前から指摘されてきたトレンドだが、これまで旅行会社を使っていなかった、あるいは使うのを長い間やめていた顧客の獲得も進んでいる。

新規顧客の増加については、米Travel Weeklyも紹介。旅行業コンソーシアムのTravel Leaders Networkが報告しているもので、公式サイトから流入する、旅行会社を利用したことのないユーザーがコロナ前から30%も増加しているという。

理由として挙げられているのはコロナ禍で顕著になった旅行手配の複雑化や遅延・欠航などのトラブル増加で、TTGの別の記事では、現在の旅行会社が精神分析医やライフコーチ、コンシェルジュ、調停人(fixer)、ドリームメーカーなど多くの役割を期待されていると指摘している。

旅行者からの期待についてより詳しく書いているのはForbesで、1月に「あなたが2023年にトラベルアドバイザーを必要とする理由」と題した記事を公開。ここでは「貴重な休暇が最大限良いものとなるという“安心感”」がポイントであるとし、「国内線航空券や道路沿いのモーテルを素早く予約したいだけ」なら自分でした方が安上がりであるとしつつ、より複雑な旅行であればプロの力が必要としている。

そのうえで2023年の旅行のプロは、「9.11、コミッションカット、OTAの台頭、そしてコロナ禍を乗り越えた強さがある」「工夫や専門性を高めた」「テクノロジーを活用して交通、宿泊、アクティビティなどすべてをパーソナライズしてくれる」「国や都市、地域にいたるまで専門知識を高めた。これにはGoogleも太刀打ちできない」「常に進歩し現地の視察も欠かさない」と説明。

さらにただ予約するだけでなく顧問のように相談に乗ってくれる、どんな危機にも対応可能、コロナ禍の時間を使って知識やスキルを向上した、などの項目でさらに具体的にメリットを説明している。

日本と欧米では業界の構造も社会環境も異なるため一概にすべてが日本の旅行業界にも当てはまるとは言えないが、「餅は餅屋」の言葉もあるようにプロの価値を評価する文化があるのは間違いない。重要なのは「美味い餅を作れるか」に尽きると言っていいだろう。

ちなみに米国では、サプライヤーが提供する無料のセミナーやトレーニングプログラムだけでなく、The Travel Institute、クルーズライン国際協会(CLIA)、そして米国トラベルアドバイザー協会(ASTA)などが有料で資格も取得可能なプログラムを提供。travelmarket reportはそうした有償プログラムの費用対効果の高さについて分析する記事も公開している。