2023年2月3日発売の「日経トレンディ2023年3月号」 ▼Amazonで購入する では、「個性派ビジホ大研究」を特集。旅行需要が再び盛り上がりを見せ、エアラインが調子を取り戻しつつある。それと同時に勢いを増しているのが、リーズナブルな料金設定を売りにして、宿泊ニーズを取り込んできたビジネスホテルだ。現在のビジホ市場では際立つ個性を持ったブランドが注目を集めている。本特集ではその魅力を解剖する。

※日経トレンディ2023年3月号より。詳しくは本誌参照

一見、そうとは分からないがこれもビジホ。ロードサイドに建ち、新規需要を旺盛に取り込んで急成長中だ
一見、そうとは分からないがこれもビジホ。ロードサイドに建ち、新規需要を旺盛に取り込んで急成長中だ

 苦境に立たされてきたビジネスホテル市場に、ようやく光が見えてきた。直近で客室稼働率が90%台に迫るところもあるなど、2020年に発生した新型コロナウイルス感染症拡大前の盛り上がりを取り戻しつつある。ただし客室単価は総じて振るわない。コロナの影響で減った需要の奪い合いで、客室料金の値下げ競争が激化。客室単価がコロナ前の水準に戻り切っていないビジホは珍しくなく、7~8割程度と本格的な回復まで道半ばのところは多い。

「日経トレンディ2023年3月号」の購入はこちら(Amazon)

 この状況に追い打ちをかける要因としては、訪日外国人観光客の取り込み不振も挙げられる。インバウンドの宿泊客は日本人客と違って、予約を宿泊日の数カ月も前から入れる傾向がある。「早い段階で予約が確定する分、いたずらに値下げする必要がなく、高値で販売できていた。結果、客室料金を宿泊日直前まで高い水準で維持する効果もあったが、現在はあまり期待できない状態が続いている」。14年から加盟店としてアパホテルを運営する貸し会議室大手、ティーケーピー執行役員の横岩利恵氏は現状を説明する。

 そうした中で存在感を高めているのが付加価値を前面に打ち出すビジホで、客室料金が1万円を大きく超えるケースも珍しくない。例えば共立メンテナンスが展開するビジホチェーン「ドーミーイン」はその好例だ。強力な集客装置として機能しているのが大浴場で、湯にはその土地の地下1000~1200メートルを掘削して掘り当てた温泉を自家源泉として使用。立地条件により掘削できないなど事情がある場合は、各温泉地から湯を運んで対応している(沸かし湯で対応する店舗も一部ある)。

宿泊客を引き付ける付加価値競争が激化

■ドーミーイン
大浴場や無料で提供される「夜鳴きそば」などが宿泊者に好評。旧来のビジホにはない付加価値を訴求する代表例として名前を挙げる業界関係者が多い
大浴場や無料で提供される「夜鳴きそば」などが宿泊者に好評。旧来のビジホにはない付加価値を訴求する代表例として名前を挙げる業界関係者が多い
■アパホテル
大規模な出店攻勢で知られるが、宿泊満足度の向上にも力を入れる。当日のチェックイン手続きを大幅に簡素化する仕組みやオリジナルベッドなどを導入
大規模な出店攻勢で知られるが、宿泊満足度の向上にも力を入れる。当日のチェックイン手続きを大幅に簡素化する仕組みやオリジナルベッドなどを導入

 同社のドーミーイン事業本部副本部長、藤井俊輔氏は「大浴場は1995年開業のドーミーイン2店舗目から始め、2005年開業の同15店舗目からは天然温泉もスタートさせた。どちらも、現在に至るまで宿泊客のニーズはかなり高い水準にある」という。入浴後に提供されるアイスキャンデーや乳酸菌飲料のほか、夜間に味わえる「夜鳴きそば」も宿泊客に好評。いずれも無料だ。

次の新潮流は何か?

 館内を日本旅館テイストのデザインで統一したドーミーイン系列の「御宿 野乃」では、新しいビジホの使い方が見られるようになった。コロナ感染を気にして温泉地への遠出を敬遠する消費者が、近場のビジホをレジャー気分で楽しんでいる。

 付加価値型は消費者に受け、今や新たな定番としてのポジションを固めつつある。一方で新潮流として注目したいのが、突き抜けた個性の一点突破で消費者の心をわしづかみにするホテルだ。「極上朝食」「あえてロードサイド」「“無人”化」……。こうした最先端の動きを、次回から見ていく。

とんがった個性派が消費者の心をつかむ

キーワード1 「極上朝食」
■The BREAKFAST HOTEL
食材やスタッフ体制にコストをかけ、目の前で調理するメニューもあるなど、朝食を強化。その水準の高さに驚き、満足感を得る宿泊客が続出している
食材やスタッフ体制にコストをかけ、目の前で調理するメニューもあるなど、朝食を強化。その水準の高さに驚き、満足感を得る宿泊客が続出している
キーワード2 「あえてロードサイド」
■HOTEL R9 The Yard
ビジホの主戦場である大規模な駅の近隣ではなく、幹線道路沿いに立地。クルマで移動する消費者をターゲットにする。客室はコンテナ型で、充実する室内設備も好評だ
ビジホの主戦場である大規模な駅の近隣ではなく、幹線道路沿いに立地。クルマで移動する消費者をターゲットにする。客室はコンテナ型で、充実する室内設備も好評だ
■フェアフィールド・バイ・マリオット 道の駅ホテル
全国各地の「道の駅」に近接。道の駅を通して、地域の魅力を楽しむ旅を提案する。画像は22年12月に開業した22軒目の「フェアフィールド・バイ・マリオット・広島世羅」
全国各地の「道の駅」に近接。道の駅を通して、地域の魅力を楽しむ旅を提案する。画像は22年12月に開業した22軒目の「フェアフィールド・バイ・マリオット・広島世羅」
キーワード3 「“無人”化」
■プリンス スマート イン
フルサービスを売りにするシティーホテルが手掛ける宿泊特化型。若いスマホ世代に向けた新ブランドで、総じてミニマルな点が宿泊者に支持されている
フルサービスを売りにするシティーホテルが手掛ける宿泊特化型。若いスマホ世代に向けた新ブランドで、総じてミニマルな点が宿泊者に支持されている
■変なホテルエクスプレス
受付業務をロボットが担当する「変なホテル」の最新版。エンタメ要素を廃し、簡単にチェックインが完了する新システムを採用する。22年12月に開業
受付業務をロボットが担当する「変なホテル」の最新版。エンタメ要素を廃し、簡単にチェックインが完了する新システムを採用する。22年12月に開業
大阪のミナミに寺院一体化のホテル誕生
 23年11月、際立つ個性を持つホテルが1つ増える。オープンするのは、七宝山大福院三津寺本堂と一体化した「カンデオホテルズ大阪心斎橋」。「地域共創型ホテル」を目指す。本堂の移動工事は2回に分けて行われた。
いずれもイメージ。「絵写経」体験ができるプランや、精進料理をモチーフにした朝食が食べられるプランなどの提供を予定している
いずれもイメージ。「絵写経」体験ができるプランや、精進料理をモチーフにした朝食が食べられるプランなどの提供を予定している
注)客室料金は時期やエリアによって変動する場合がある
注)「個性派ビジホ大研究」は、「日経トレンディ」2023年3月号に掲載しています。日経クロストレンド有料会員の方は、電子版でご覧いただけます。
▼関連リンク 「日経トレンディ」(電子版)
「日経トレンディ2023年3月号」の主な内容を紹介
【得する!ANA&JAL】
●特別対談・呉越同舟
ANA・JALキーパーソン、未来を語る
●マイレージ編
ANAマイルの期限延長はもう限界。賢く消費する6つの戦略
JALの国内特典航空券が4月に大改定。“駆け込み”で使うべき?
買い物以外で数千マイルたまる! 2社の新サービスを徹底比較
●ANA編
ANAアプリ刷新で、航空券予約から機上エンタメまでが快適に
モニター付きはどちらが快適? B787-9vsA321を試乗レポート
355日前から航空券は予約可能に! 高値づかみしない基本ワザ
●JAL編
新鋭機「エアバスA350」の見どころと新座席のベストポジション
国内航空券の種類が4月に刷新。往復、子連れはメリット大
機内食は月替わり! 国内線ファーストクラスの魅力
●格安旅行編
【LCC】観光需要増でグループ再編。中距離国際線が拡充
【ビジネスホテル】「現金キャッシュバック」を狙って安く泊まる
【旅行比較サイト】計8サイトを比較。新参カカクコムの強みとは
宿泊客の心をわしづかみ! 個性派ビジホ大研究
●驚異の利益ゼロで豪華&出来たての「極上朝食」
●「あえてロードサイド」に建つコンテナ型ホテル
「暦年贈与」で損をする!? 生前贈与の新常識
●2024年に変わる! 相続&贈与のルール改正「5つのポイント」
●相続時精算課税制度の使い勝手向上で、暦年贈与より有利に
「ドン・キホーテ」流、ヒット連発の新方程式
未来の市場をつくる100社 2023年版【後編】
▼「日経トレンディ2023年3月号」をAmazonで購入する
12
この記事をいいね!する