データインバウンド
インバウンド再開後の訪日外国人 消費動向、リベンジ消費で回復傾向も中国不在が鮮明
2023.02.06
やまとごころ編集部インバウンド客によるクレジットカードの決済データをもとに、訪日外国人の消費動向について調査分析したレポートが発表された。三井住友カード株式会社が保有するキャッシュレスデータのうち2023年1月10日までに入手したデータを基に、株式会社日本総合研究所が調査、分析を行った。
(図版出典:三井住友カード・日本総合研究所「インバウンド需要の回復状況 ~ クレジットカード決済データが示す構造変化 ~」)
2022年10月水際対策緩和とともにキャッシュレス決済の消費急増
下のグラフは決済件数および決済額の日次推移だが、これをみると、コロナ発生直後の水際対策強化、東京五輪、水際対策の緩和と、イベント発生時における訪日外国人の動きをかなり正確に捕捉していることがわかる。2022年10月に観光客の受け入れを再開して以降、決済件数、金額ともに12月末まで右肩上がりで増加しており、直近ではコロナ前の水準まで持ち直している。
回復力、地域間に大きな差。近畿、北海道などで遅れ
次に日本国内の地域別のインバウンド決済額を見ると、下の表からは、インバウンド決済の回復状況に地域間格差があるのがわかる。関東・中部・東北などではコロナ前を上回る水準に達しているのに対し、近畿・北海道などの回復には遅れが見られ、特定の地域のインバウンド観光が先行して回復した印象がある。元々のインバウンド需要規模が小さかったという側面はあるものの、山形県・群馬県・福井県などのインバウンド決済額はコロナ前を大幅超過している。
回復が遅れている都道府県の代表例として、大阪府のインバウンド決済をみると、回復の早い韓国などの決済額は増えているが、シェアの大きかった中国の決済額が大幅に落ち込んで足を引っ張っている状況だ。
一方、 回復が先行している都道府県の代表例として、大分県のインバウンド決済をみると、特定の国に依存することなしに、満遍なくインバウンド決済額が回復している様子がわかる。
百貨店、家電、ドラッグストアなどコロナ前の水準大きく下回る
業種別にみても、インバウンド決済の回復度合いの格差は大きい。バッグや財布といった服飾小物ブランド、外食、衣服、テーマパークはコロナ前の水準を大きく上回っている状況だ。それに対し、百貨店、家電、ドラッグストアなどはコロナ前水準を大きく下回っている。さらに詳細にみると、コロナ前に比べてコンビニやスーパーでの決済額が大幅に増加している。訪日外国人の間でも、弁当や惣菜を買うなど中食シフトが進んでいる可能性も考えられる。
中国の消費回復せず、市場の偏りに伴うリスクが鮮明に
百貨店のインバウンド決済の回復率は43.1%と、中でももっとも遅れている。これは、下の表をみてもわかるように、台湾、アメリカ、韓国など多くの国でコロナ前水準を上回っているものの、 シェアの大きかった中国の決済額が回復せず足を引っ張っているためだ。中国からの訪日客に大きく依存していたという点で、大阪府と同じ構図なのがわかる。
回復が先行している業種の代表例としては、バー・ナイトクラブが挙げられるが、そのインバウンド決済をみると、米国・台湾・シンガポール・オーストラリア人の決済額が大幅に増加。ナイトタイム・エコノミーが一部復活していると思われる。
円安でカード当たり決済額が大幅増、プチ爆買いも
円安で訪日旅行への意欲が増しているともいわれる。実際に差の少ない韓国ウォンを除くと、2019年比で軒並み10~20%前後、割安に感じられるはずだ。
そこで、カード当たりの決済額をみると、いずれの国・地域もコロナ前に比べて大幅上振れとなっている。この背景としては以下の3点が考えられる。
① 昨年来の為替変動で1~2割の円安進行。その結果、外国人が日本で消費する際の購買力が大幅向上
② 3年ぶりの訪日旅行に伴うリベンジ効果
③ 海外諸国でも積み上がっているコロナ貯蓄で、日本への旅行原資が潤沢に
次に、支出が多い項目をみると、全体的にはコト消費よりモノ消費に対する支出意欲が盛り上がっている印象を受ける。とくに、ショッピングセンターや服飾小物ブランドの決済額が大幅に増加しているし、衣服や百貨店への支出意欲も旺盛。3年ぶりの日本旅行で、短期的には「爆買い」傾向が強まっている可能性がある。
また、決済額の増加分から回数要因と単価要因を抽出すると、国籍や買い物シーン(業種)によって大きな違いがあるのがわかった。衣服に関しては、米国では決済単価に変化はないものの決済回数が増加しているが、台湾では決済単価の上昇が決済額が増えた主因となっている。一方、米国・台湾に共通した動きとしては、百貨店は決済単価が増加傾向にあるが、コンビニは決済回数の増加が、決済金額増加の要因であることがわかる。
今後のインバウンド需要の回復ペースは、中国人観光客の戻り方に大きく左右される。インバウンド需要を安定した地域経済活性化につなげるためには、国籍の多様化・分散化に取り組むことが不可欠であるとレポートは結んでいる。
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