府内の倒産件数、2年ぶり増 コロナ融資の影響、負債額300億円超

原田達矢
[PR]

 2022年の府内企業の倒産件数は2年ぶりに増加し、負債総額は前年からほぼ倍増したことが、信用調査会社2社の調査で明らかになった。新型コロナウイルス感染拡大の影響に対応した融資の返済が始まったところに、物価高騰円安が重なり「息切れ倒産」が増えた。府や京都市は新たな融資制度を設けたが、「運転資金が増えるわけではない」と効果を疑問視する声も上がる。

 帝国データバンク京都支店のまとめ(負債額1千万円以上の法的整理)によると、22年の倒産件数は231件で21年から2割増加した。負債総額は332億9300万円で前年より約2倍に増加した。

 負債額では「5千万円未満」の小規模な倒産が7割以上を占めた。一方、「1億円以上5億円未満」の倒産は36件と、前年よりも1・7倍に増加した。企業の資金繰りを支える支援策の一つで実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」を借り入れたものの、返済見通しが立たなくなるなどして負債が膨らんだとみられる。

 業種別ではコロナ禍でホテルや旅館の利用が減るなどし、「サービス業」で17件増えた。「運輸・通信業」でも府内のタクシー会社2社が倒産するなど12件増と大幅に増えた。

 東京商工リサーチ京都支店によると(同1千万円以上の私的整理を含む)、負債額が1千万円以上の倒産件数は237件、負債総額は317億2600万円。「建設業」の倒産件数が53件で、最も多かった。民間工事を扱う個人の建設事業者の倒産が多い。

 コロナ関連の倒産件数が前年より2倍以上増加。イベント中止が相次ぎ、影響を受けた印刷業者やホテル事業者などは、負債総額でも上位を占めた。同支店の調査担当者は、エネルギー価格の高騰や物価高などの外的要因も続いており「厳しい状況は変わらない」として、今後倒産する企業が増加する可能性もあると分析する。

     ◇

 今後、企業の先行きに影響を与えそうなのが、「ゼロゼロ融資」の返済だ。今春から返済のピークを迎えるため、府や京都市、地元金融機関などは、借り換えに対応して借り入れ条件を緩和した新たな融資制度を設けている。

 ゼロゼロ融資は、売上高が急減した中小企業に対し、地元の金融機関が最大4千万円を担保なしで貸す制度。府内は、2020年5月~21年5月の1年間で約4万7千件、約1兆円の利用があった。

 帝国データバンク京都支店が昨年8月に府内企業に実施した調査では、140社が「現在借りている」と回答。そのうち半数ほどの企業が23年以降に返済が始まると答えた。「電気通信」や「出版・印刷」、墓石や骨董(こっとう)品販売などを扱う業者を指す「専門商品小売」などの業種では、返済への不安の声もあがった。

 府と京都市は共同で補助金を出し、21年からコロナ融資のための制度「伴走支援型経営改善おうえん資金」を実施している。だが、前年同月比で売り上げが15%以上減少した場合など融資の条件が厳しく、利用できない企業も多かった。

 そのため新たな制度では、売り上げの減少幅などで条件を緩めた。ただし、融資限度額は1億円で、利率は1・1%(固定)かかる。事業者には、経営行動計画書の作成や、四半期ごとに経営状況の点検を受けることなどが求められる。

 ただ、どれほどの企業が制度を活用するかや、倒産抑制の効果があるのかは見通せない。帝国データバンク京都支店の担当者は「あくまで融資の借り換えであり、企業の運転資金が増えるわけではない。中小企業への倒産を防ぐための対策と言えるかは微妙だ」と指摘する。

 知事や金融機関の代表らが集まった融資制度についての記者会見で、京都中央信用金庫の白波瀬誠理事長は「制度の利用促進で過度な返済負担は避けられる」と述べた。ただ、「最も重要なことは収益力の回復だ」として企業側へ情報提供や異業種交流を積極的に提案していくとした。西脇隆俊知事は「安心して利用してもらうため制度を設けた。オール京都態勢で中小企業を支援していきたい」と語った。(原田達矢)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら