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今シーズンは深刻な人手不足に陥っている北海道ニセコのスキーリゾート Photo by Chang W. Lee / The New York Times

今シーズンは深刻な人手不足に陥っている北海道ニセコのスキーリゾート Photo by Chang W. Lee / The New York Times

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ニューヨーク・タイムズ(米国)

ニューヨーク・タイムズ(米国)

Text by Motoko Rich and Hikari Hida

水際対策の緩和で北海道のニセコにも外国人観光客が押し寄せているが、深刻な人手不足で“おもてなし”ができていないという。現地の混乱ぶりを米紙「ニューヨーク・タイムズ」が取材した。

スキーの聖地は求人広告だらけ


豊富な降雪量と柔らかく軽い雪質に恵まれた北海道ニセコのスキーリゾートは、1泊2000ドル以上もするラグジュアリーホテルのほか、モンクレールやボグナーのウエアを販売する高級店で知られるようになった。

だが、今シーズンはアートギャラリーやインスタ映えするカフェの風景のなかに、あるものが必然的に目に入る。まだ続くコロナ禍の経済的混乱を示すもの、「求人広告」だ。

天井から空の酒瓶が何十本と吊るされているダイニングバー「魂」は、調理補助や皿洗い、レジ係の仕事を最低賃金の約7割増しで募集するチラシを掲示している。

アンヌプリ山に広がる4大スキーリゾートのひとつ「ニセコHANAZONOリゾート」は、スキーインストラクターやシャトルバス運転手、リフトの運行担当者、レンタルショップのスタッフを募集中。採用者にはシーズンパスや光熱費無料の従業員寮と、「最高のパウダースノーを思う存分」提供するという。

マッサージ店「レジュスパ」はセラピストを募集中で、750ドル相当の航空券手当を支給する方針だ。

2年半にわたってインバウンド旅行客に国境を閉ざしてきた日本は、2022年10月にようやく受け入れを再開し、長引いた「鎖国」状態に終止符を打った。それ以来、ニセコ地区には世界的に有名なゲレンデを求めて外国人観光客が殺到している。


海外からの季節労働者が間に合わず…


スキーシーズン直前の受け入れ再開は、ニセコ町、倶知安町、蘭越町で構成するニセコ観光圏の経営者にとって喜ばしいことだった。だが一方で、深刻な人手不足をどうやって穴埋めするかという課題は残る。

大枚をはたく観光客が期待するサービスを提供するため、何が何でも人材を確保しなければならないのだ。

倶知安観光協会によると、ニセコ観光圏の人口は約2万5000人だが、11月から3月の間に訪れる観光客は130万人を超えることもある。

ところが今シーズンは、国境再開からまだ間もないため、例年海外から季節労働者を確保する雇用主は就労ビザの取得に四苦八苦している。日本円で支払われる給与は円安で目減りするとして尻込みする労働者も少なくない。

国内からも人はなかなか集まらない。「スキー産業に興味がなかったり、雪が積もった地域で3ヵ月も過ごしたい人がいなかったりですね」と、一般社団法人ニセコプロモーションボードの長井聡ゼネラルマネジャーは指摘する。

人手が不足すると、働く側には好待遇が提示されるため、労働者からすると好都合だ。2022年秋にワーキングホリデービザでスウェーデンから来日したマーカス・ティマンダー(31)は、ニセコで働く人を対象としたフェイスブックのいくつかのグループに「すぐ働ける」と投稿すると、3日以内に9件の仕事のオファーが舞い込んだという。
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