インドネシアの婚外交渉禁止法、渡航者には適用しないと当局 観光への影響懸念

Tourists on a beach in Bali

画像提供, Getty Images

インドネシア当局は12日、先に議会が可決した、婚外交渉を犯罪化する改正刑法について、同国を訪れる外国人観光客には適用されないとの見解を示した。

この改正法は3年後に施行される予定で、婚外交渉をした場合は最長で1年、結婚せずに同居したカップルは6カ月の禁錮刑を科せられる。当初は外国人の在住者や観光客にも適用されるとされたため、「バリ島のセックス禁止法」というあだ名が付けられた。

一連の改正は、イスラム教徒が大半を占める同国で宗教保守の台頭を受けたもの。

海外では婚外交渉の禁止が大きく取り上げられているが、インドネシア国内では、大統領や副大統領に対する批判の禁止など、政治的な自由を制限する改正内容のほうが、不安の声が強い。

国連は、改正法が人権侵害に当たる可能性があると指摘しているが、インドネシア当局は「インドネシアの価値観」を守るものだと主張している。

観光業への影響を懸念

産業界は、新型コロナウイルスのパンデミックから回復途中にあるインドネシアの観光業に影響が出ると懸念している。

2019年には、1600万人が同国を訪れていた。

改正法は理論的にはインドネシア人にも外国人にも適用されるが、当局は観光客が起訴されるとの懸念を払拭(ふっしょく)しようとしている。

バリ島のワヤン・コスター知事は、「バリはいつも通りのバリだ。安全かつ安心して訪問できる場所だ」と強調した。

また、ホテルの宿泊時に婚姻関係を証明する必要はなく、警察などによるチェックもないと述べた。

インドネシアのエドワード・オマル・シャリフ・ヒアリエジ法務次官も、外国人が起訴されることはないと発言。「外国人観光客に強調したいのは、この条項で訴追されることはないので、ぜひインドネシアに来てほしいということだ」と述べた。

改正法では、違反したカップルの子供、親、配偶者のいずれかが告発しなければ、検察側は起訴できないとされている。当局はこれをもって、観光客に影響はないとしている。