旅客便の「ワンマン運航」 コスト削減のため解禁求める声

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多くの国が、航空業界でのコスト削減と人材不足対策として、世界の航空安全規則を管理する国連の国際民間航空機関(ICAO)に対し、旅客機で操縦士の数を2人から1人に減らす「ワンマン運航」モデルに移行するよう求めている。

欧州航空安全機関(EASA)は、2027年にも移行が実現すると考えているが、これにより安全性の問題が生じる他、操縦士のストレスも増加する。

カンタス航空のエアバスA330型機機長で、オーストラリア国際操縦士協会(AIPA)会長のトニー・ルーカスはブルームバーグに対し、単独の操縦士は緊急事態発生時すぐに途方に暮れてしてしまう可能性があり、予備の要員が操縦室に到着するころには手遅れとなる恐れがあると説明。ワンマン運航を推進している面々は、ジェット機を毎日操縦している人々ではないと指摘した。

別の問題として、ワンマン運航が主流になると、若手操縦士が経験豊富なパイロットから学ぶ機会が減ることもある。

EASAは、ワンマン運航に関する安全リスク評価を実施し、疲労やトイレ休憩などの問題に対処するためにはどのような規則が必要かを検討中だ。昨年1月には、パイロットが操縦できなくなった場合も無人で飛行機を飛ばせる高度自律操縦システムが必要だとの見解も示している。

航空業界ではここ数十年にわたり自動化が進んでおり、自動操縦に行きつくのは論理的な流れとも言えるだろう。1950年代の旅客便では、機長と副操縦士、航空機関士、航空士、通信士がそろって操縦室に入っていた。

これまでにドイツや英国など40カ国以上が、規則の変更を要請。欧州連合(EU)は、ワンマン運航の安全性は操縦士2人による運航と変わらないと主張している。しかし大きな課題は、操縦士1人で安全に飛べるかどうかではなく、ワンマン運航が乗客に受け入れられるか否かになるだろう。

forbes.com 原文

編集=遠藤宗生

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