人手不足でホテルや旅館が悲鳴 「稼ぎ時なのに」予約や夕食中止に 外国人活用の動きも

マスクを付けて観光する観光客ら=10月、京都市東山区(渡辺恭晃撮影)
マスクを付けて観光する観光客ら=10月、京都市東山区(渡辺恭晃撮影)

政府の観光支援策「全国旅行支援(全国旅行割)」などで観光の需要が伸びる中、ホテルや旅館の人手不足が深刻化している。宿泊予約を断るケースが相次ぐなど機会損失は大きく、打開に向けた取り組みが急務となっている。

40人が離職

「4月から従業員の募集をかけているが、ほとんど集まらない」

沖縄県那覇市にある南西観光ホテルの上原尚彦統括総支配人(44)は声を落とす。新型コロナの感染拡大で宿泊客が激減し、従業員が60人のうち40人が離職した。全国旅行支援や水際対策緩和などの影響で需要が再び増え、10月以降は昨年同時期に比べ、宿泊客は約3倍に伸びたが、従業員を募集しても集まらない状況が続いている。

本来なら稼ぎ時だが、人手不足のため宴会や夕食の受付をストップして朝食のみにしたり、客室の稼働を減らしたりしているといい、「清掃やベッドメイキングも、午後3時に終わらせるように、みんなで大慌てでやっている」と語る。

時間外労働も増加

観光庁が発表した宿泊旅行統計調査によれば、10月の宿泊者数は前年同月比38%増。こうした需要急増に人材確保が追いつかず、帝国データバンクが全国2万6752社(有効回答企業数は 1 万1632社)を対象に行った調査「人手不足に対する企業の動向調査」(10月18~31日)によると、旅館・ホテル業では、65・4%が正社員が不足していると回答し、75・0%が非正社員が不足していると答えた。時間外労働が増加した企業は66・7%に及ぶという。

外国人求人者とマッチング

こうした状況の中、人手不足に悩む旅館・ホテル業界で外国人を活用しようという動きが出てきた。旅行最大手JTBグループの「JTB旅連事業」(東京都文京区)は、特定技能人材を中心とした外国人人材のマッチングサービスを行う「トクティー」(同港区)などと提携し、「JTB協定旅館ホテル連盟」に加盟する約3600施設の会員向けにサービスの説明を行うウェブセミナーなどを開催している。

トクティーは、雇用主と外国人求職者を多言語対応したプラットフォーム上でつなぎ、仕事内容や給与、労働時間、能力など、雇用主と求職者が求める条件のマッチングにより、新たな就労機会を提供するサービスを提供している。海外の185社の人材会社と提携し、「特定技能ビザ」の保有者を含めた約3万5千人の外国人人材のデータベースを保有しており、杉原尚輔代表(37)によると、ベトナム人が約6割で最も多く、次いでネパール人、インドネシア人、ミャンマー人が多いという。まん延防止等重点措置が解除され、3年ぶりに行動制限のない大型連休があった5月から旅館やホテルからの問い合わせが増え始め、11月には31施設から問い合わせがあったという。

杉原代表は、「老舗の旅館など地方の宿泊業者からの悩みの声は多く、観光業界を盛り上げるためにも協力していきたい」と話している。(本江希望)

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