「安売り競争」が日本の観光地をダメにする根因だ スキー場に「価格2倍のVIP券」を導入した深い訳
日本のスキー人口が激減、インバウンドも途絶え、多くのスキー場が青息吐息となっている。そんな中、来場者数が過去最多を更新し続けている話題のスキー場をご存じだろうか? 長野県白馬にある「白馬岩岳マウンテンリゾート」だ。
「土地が本来持っている『隠れた資産』を発見し、磨き上げる。ただそれだけを考え、さまざまなアイデアを実現してきました。その結果、わずか4年で100のテレビ番組で紹介していただき、スキー場なのに夏の来場者数が8倍になって、冬の来場者数を超えるという結果につながったのです」
そう語るのが、白馬岩岳マウンテンリゾート代表の和田寛氏だ。ずば抜けたアイデアを次々と導入し、「夏に稼ぐスキー場」を生み出した和田氏。その初の著書『スキー場は夏に儲けろ!――誰も気づいていない「逆転ヒット」の法則』が刊行された。ここでは、日本の観光地をダメにする「安売りという罠」について解説してもらう。
「割引」「クーポン」という名の麻薬
私は長野県白馬村のスキー場の運営に携わっています。小さな会社ですのでお問い合わせの電話を自ら受けることもよくあります。その中で、個人的にとても違和感を覚える問い合わせがあります。
それが、「割引券はどこで手に入りますか」というものです。スキー場の窓口で「割引クーポンってないんですか」と聞かれるケースもあります。
来ることが決まっている方や実際に窓口まで来てくれている方に割引を紹介するとすれば、「正価(定価)」の意味がなくなってしまいます。
スキー業界では、シーズン前から「早割チケット」が随所で販売される慣行がすっかり定着してしまっています。少しでも早い段階でお客さんの数を確保し、キャッシュフローを楽にしたいという施策です。
10~11月に販売されるこれらのチケットは、通常価格から2~4割引されます。でも、これが実際にお客さんの数を増やしているのかというと疑問符が付きます。「もともと来るはずだったお客さんに、わざわざ(手間をかけて)安くなるチケットをお渡しているだけなのではないか」、そう思ってしまいます。
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