個人消費 勢いあり?なし?データから読み解く

個人消費 勢いあり?なし?データから読み解く
秋の行楽シーズンを迎え、繁華街や全国の観光地は多くの人でにぎわっています。政府の観光促進策「全国旅行支援」や水際対策の緩和の効果もあらわれているようです。一方で記録的な物価の上昇が続き、食料品など生活必需品の値上げが私たちの暮らしを直撃しています。日本経済のけん引役、個人消費に勢いはあるのか、そしてこの先どうなるのか、データをもとに探ります。(経済部記者 寺田麻美)

サービス消費が回復

こちらは、クレジットカードの半月ごとの利用情報をもとに消費の動向を指数にしたものです。

感染拡大前にあたる2018年度までの3年間の平均と比較して見ていきます。
(※2019年度は消費税率の引き上げがあったため除外しています)
注目するのは旅行や外食などの「サービス消費」。新型コロナの第7波が広がった7月から8月にかけて落ち込んでいることがわかります。

ただ、9月に入ると、感染が減少傾向になったことから、「サービス消費」が回復。10月からは全国旅行支援の恩恵で旅行需要が増加し、全体では、コロナ前の水準を6.6%上回りました。

さらに、円安を背景に、外国人旅行者数の増加も予想されていて、インバウンド消費の回復も期待されています。

10月の“値上げラッシュ”の影響は

一方で10月は食品や飲料の値上げの動きが相次ぐ“値上げラッシュ”があり、これが消費にどのような影響を及ぼしたのか気になるところです。
その影響がデータではっきりとあらわれているのが、「酒屋」と「ディスカウントショップ」。

先ほどのカードの利用情報をもとにこの2つの消費の推移を見てみます。

2つとも、9月後半の消費が急増し、9月前半と比べて10ポイント以上伸びています。しかし、10月前半は一転して20ポイント以上の減少となりました。

値上げ前に、酒類などを中心に駆け込み需要が拡大し、値上げのあとにその反動減が起きたと見られます。

買い替え意欲の低下も

それでは消費者の“消費意欲”はどうなっているのか。「消費者態度指数」の推移を見てみます。
これは、今後半年間の暮らし向きがどうなるかや自動車や家電製品が買い時になるかなどを聞き、消費者の心理を指数で示したものです。

9月と10月は、2か月連続で悪化しています。10月には消費者心理の基調判断を「弱い動きがみられる」に下方修正しました。内閣府は、生活必需品の値上がりに伴い、家電製品などを買い替える意欲が低下していることが背景にあると分析しています。

都内のスーパーに取材したところ、次のような声が聞かれました。
「かごに入れる点数が減っていて、むだなモノは買わないようになっている」

「特売などに並ぶ人が多くなり、生活防衛に入っていると感じる」
物価高によって消費者の意識に変化が出ているようです。

国内の消費は“まだら模様”

このように、旅行や外食などのサービス消費が回復傾向にある一方で、物価高が消費意欲を低下させているという面もみられ、国内の消費は全体の方向感が見えない“まだら模様”といった状況です。
政府は巨額の財政出動で消費者の支援に乗り出していますが、日本経済のけん引役である消費を活発にするためには持続的な“経済の好循環”の形を生み出す必要があります。

そのためにも企業の賃上げの動きがどこまで広がるのかという点も引き続き焦点となります。
経済部記者
寺田 麻美
2009年入局
流通・物価などを担当