国内ホテル、客室単価が回復基調 稼働率は60%超続く
新型コロナウイルス禍で落ち込んでいた国内のホテルの客室料金の単価が回復しつつある。ホテル専門の米調査会社STRがまとめた7月の全国の平均客室単価は1万3543円と前年同月比6%高く、コロナ禍に入ってからでは最も高い水準になった。第7波で感染が再び広がるなかでも、宿泊需要の戻りが続いている。
STRによると、全国のホテルの平均稼働率は前月比1ポイント低い60.7%。2カ月連続で60%を超えた。コロナ禍前の80%以上の水準には及ばないものの、回復の足取りは着実だ。
7月前半は第7波でビジネス客の予約取り消しが一部であった。一方、行動制限の緩和を踏まえた観光目的の宿泊需要がけん引。3連休初日の7月16日には82%を記録した。7月は前年同月比では約15ポイント高かった。
稼働率の回復は単価上昇につながっている。2021年7、8月は東京五輪の開催に伴い関係者の宿泊が増えて東京の料金を大幅に押し上げたが、今年7月はその反動安を踏まえても前年水準を6%上回っている。コロナ禍前の19年7月と比べた単価の回復率は93%で、単価の水準としては19年12月以来の水準となった。
22年6月との比較では21%の上昇だった。例年夏休み期は料金が上がる傾向がある。稼働率の向上を受け、ホテル側は季節通りに上げやすくなっている。
STRの桜井詩織マネジャーはさらに「今年7月は世界的なインフレの影響も一部で出てきたようだ」と話す。国際的な原燃料高を背景に電気代や食材費が高くなっているほか、営業回復に伴う人員確保のための人件費も上昇基調だ。そうしたコストを転嫁するため、夏向けに料金を引き上げる際に上乗せしたホテルもあったとみられる。
単価の上昇を背景に、ホテルの1室当たりの収益力を示す指標「RevPAR」(ホテルの売上高を販売可能な部屋数で割った数値)も、コロナ禍に入って以降で最高値となる8215円をつけた。
8月は夏休み需要で7月以上に回復した可能性もある。例年9月になると需要がいったん落ちつくが、今年は政府が7日から、1日当たり2万人という現行の入国者数の上限を5万人に引き上げる方針を掲げる。STRの桜井氏は「外国人の利用増という下支え要因もあり、都市部では今後も単価は堅調に推移するのではないか」とみる。
(佐伯太朗)
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