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新型コロナウイルス対応で逼迫(ひっぱく)する保健所の負担を軽くするため、民間スタッフを使う自治体がある。だが、パソコンをほとんど使えない人材が派遣され、混乱した現場があったと耳にした。取材を進めると、そのスタッフらは自治体が派遣を委託した業者ではなく、業者が「再委託」した別の業者から送り込まれていたことが判明した。しかも、再委託は原則禁止なのに特別に認められ、他社との見積もり比較も省略するといった「特例」が重ねられていたという。背景を探った。【石川将来】
出勤すらしないスタッフ
「第6波」のさなかの今春。大阪府のある保健所に10人程度のスタッフが派遣されてきた。任せるのは、新型コロナ感染者が保険請求に利用できる「療養証明書」の発行業務など。これで保健所職員の負担は減る――。そのはずだった。
だが、現実は違った。あるスタッフが不慣れな様子で表計算ソフト「エクセル」で書類を作っていると、マウスが手に当たった。画面が下にスクロールされ、データ入力箇所が画面の上へ移動すると、「消えちゃいました……」と困惑した顔で質問してくる。画面を再び上にスクロールすれば解決するが、こうした基本操作もままならない。
ある女性職員によると、スタッフには高齢者が多く、「パソコンを使えない」と申告する人も多数いたという。この職員は「上司も『ここはパソコン教室じゃないぞ』と嘆いていた。辞める人も多く、1カ月で3分の2くらいは顔ぶれが変わった」と話す。
別の保健所も当時の状況は一緒だった。何度指摘しても同じミスが繰り返され、職員がチェックせざるを得ない。ある男性職員は4月下旬、「負担は軽くならず、徒労感すら感じた」と漏らし、「債務不履行に当たると思う」との認識を示した。派遣が始まった当初、大阪府職員労働組合には「スタッフ2人が出勤しない」「業務時間中にゴルフの素振りをしたり、外に出て喫煙したりしている」といった不満が保健所から寄せられたという。
個人情報の取り扱いでも問題が起きた。…
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