悩む離島観光地 コロナ療養施設ひっ迫

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、記者会見する沖縄県の玉城デニー知事=7月21日午後、沖縄県庁
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、記者会見する沖縄県の玉城デニー知事=7月21日午後、沖縄県庁

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、政府は行動規制などを実施せず、夏休みを利用して旅行に出かける人数は昨年に比べ大幅に増加しているもようだ。しかし、旅行先でコロナの陽性が判明するケースは少なくなく、医療体制が逼迫(ひっぱく)する自治体側に負担が生じている。とりわけ離島の観光地ではコロナ患者用の宿泊療養施設が旅行客でいっぱいになったり、船などで移送したり対応に苦慮している。

旅行大手のJTBは7月15日から8月31日の期間の1泊以上の旅行動向を調査。調査は新型コロナ急拡大前の6月下旬に実施されたため減少も予想されるが、国内旅行人数は約7千万人と推計し、前年の175%に。令和元年の96・7%となり、コロナ前の水準並みとの推計が出た。

旅行先は関東(17・4%)が最も多く、次いで近畿(13・0%)、東海(10・4%)。遠方へ足を延ばす人が増えたのが特徴で、首都圏を含む関東居住者は域内の旅行が前年より6・2ポイント減少した一方で、北海道、九州・沖縄への旅行が増加した。

夏休み旅行の候補地の筆頭である沖縄県では、7月の段階で旅行の予約状況は前年と比べ約2倍になっているという。

しかし、同県は感染者が急増しており、「医療非常事態宣言」を発出。県民に軽症や検査目的での救急外来の受診は控えるよう要請した。旅行者に対しても事前のPCR検査などを推奨し体調管理を求めたが、旅行者のコロナ感染の対応が課題の一つだ。

県の担当者は7月末時点で「沖縄本島でも場所によっては宿泊療養施設の利用者のうち20~30%、離島では80%が旅行者のところもあると聞いている」と明かす。施設を増やそうにも看護師などの人手が足りず、簡単に増設できないという。お盆期間の本格的な観光シーズンを前に「今後もっと増えると厳しくなる」との見通しを示した。

沖縄県・久米島ではそもそも島内に宿泊療養施設がない。そのため旅行者は、滞在中のホテルで隔離するか、一般客と接触しないような形で、船で沖縄本島に移送しているという。

島根県・隠岐ノ島も島内に宿泊療養施設がなく、県の取り締まり船や防災ヘリなどを活用して本土へ移送することも検討中だ。島にはホテルなど収容できる施設が少なく、県の担当者は「観光シーズンでもあるため、療養施設として確保するのは難しい」と話す。

太平洋上の小笠原諸島にある東京都小笠原村では、現時点で宿泊療養施設を14部屋分確保。村の担当者によると、施設のほとんどを旅行者が利用している。小笠原諸島と本土を行き来する船は3、4日に1便しかなく、担当者は「来島して感染が判明すると帰る手段がなくなる。事前にPCR検査を受けて体調が万全の状態で来島してもらえれば」とした。

自治体側は旅行客に対し、解熱剤や服用中の薬の多めの持参なども呼び掛けるが、関西福祉大の勝田吉彰教授(渡航医学)は、観光地が取れる対策として、「本来は病院船を造って船内でコロナ患者をケアをできるのが好ましい。現時点では、観光地側がある程度、施設を確保しておくしかない」と指摘。一般客船を借り上げ療養施設として利用する方法などを提案している。(吉沢智美)

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