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滞在楽しむ 都市型ホテル プールや読書 新たな付加価値

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 宿泊だけでなく、滞在時間を楽しんでもらう「プラスアルファ」のサービスを充実させた都市型ホテルが相次いで開業している。観光業界は新型コロナウイルス禍で厳しい状況が続いており、新たな「ホテル時間」を提案することで需要を喚起したい考えだ。(松本晋太郎)

展望サウナ

カンデオホテルズ熊本新市街の最上階に設けられたサウナからは街並みを一望できる(6日、熊本市中央区で)
カンデオホテルズ熊本新市街の最上階に設けられたサウナからは街並みを一望できる(6日、熊本市中央区で)

 熊本市の中心市街地に位置するアーケード沿いに完成した地上12階建てビルに10日、「カンデオホテルズ熊本新市街」が開業した。熊本市が高さ制限を緩和した特例の第1号ビルで、地域でひときわ高い。380室を備え、最上階のサウナや露天風呂から熊本城や市街地を一望できる。

 全国24のホテルを展開するチェーンで、最上階の露天風呂に初めて本格的なサウナを併設した。街の景色を眺めながらサウナで汗を流す非日常の開放感を提供し、サウナブームに乗って愛好家を取り込みたい考えだ。日帰り客も見込む。客室は、平均的なビジネスホテルより広く、料金は1室1泊1万5000円前後で、経営幹部や管理職をターゲットに置く。

 全国チェーンのアパホテルが福岡市のJR博多駅近くにオープンした「アパホテル&リゾート博多駅東」は、九州で初めて最上階にプールを備えた。従来のビジネスホテルと違い、泊まるだけでなく「楽しむためにホテルを利用したい」という客層を開拓する。

 カンデオホテルズを運営するカンデオ・ホスピタリティ・マネジメント(東京)の穂積輝明会長兼社長は「旅行回数が減り、少し高いホテルに泊まりたいというリベンジ需要がある。ビジネスホテルとシティーホテルの中間が狙いで、付加価値のあるホテルとして勝負する」と意気込む。

読み放題

 福岡市・大名に昨年12月にオープンした「ランプライトブックスホテル福岡」は読書を楽しむホテルだ。24時間利用できる書店を1階に構え、「旅」や「ミステリー」を中心に約4000冊をそろえた。宿泊客は気に入った本を借りて客室で読むことができる。「ちょっぴりマニアックな旅のかたち」を掲げ、読書を目的に宿泊する客は多く、リピーターも増えている。

 福岡市・天神の「クインテッサホテル福岡天神コミック&ブックス」のロビーには、新作から昔懐かしい名作まで約7000冊の漫画本が並ぶ。宿泊客は無料で読み放題。宿泊客以外も1時間500円(税込み)で利用できる。コロナ禍で観光客が見込めず、「ホテルで楽しみながら過ごしてもらう」(運営会社)と考案。同じ系列の宿泊特化型ホテルより稼働率は高い。定期的に漫画を入れ替え、性別や年代にかかわらず幅広い客層のリピーターを取り込んでいる。

長期滞在

 観光庁によると、国内の宿泊施設の稼働率は2021年に34・3%と、19年より28・4ポイント低下した。一方、コロナ後を見据えてホテル建設は続いており、今年1月の宿泊施設数は6万2991施設と、3年間で5089施設増えた。コロナ禍でインバウンド(訪日外国人客)が消滅し、出張客は減った。設備やサービスを充実させて差別化を図り、ホテルでの滞在時間を宿泊の目的にしてもらい、客単価を上げるのも狙いだ。

 西日本鉄道が来春開業する福岡市博多区の「西鉄ホテルクルーム博多祇園」(仮称)は、同じブランドのホテルで初めて長期滞在型の客室を設ける。休暇を取りながら仕事をするワーケーションの受け入れを狙い、全客室の4分の1の66室にキッチンや洗濯乾燥機を備えた。

 熊本市の中心街に建設中の「 OMOおも 5熊本」は、星野リゾートが九州で初めて手がける都市型ホテルブランドで、ホテルを中心に徒歩圏内を「街」ととらえ、街歩きを楽しむガイドツアーを用意している。

 立教大の沢柳知彦特任教授(ホテル経営学)は「訪日客や団体客の回復は時間がかかり、出張需要は戻らない可能性が高い。需要の変化に対応し、旅を必要としない人にもいかに利用してもらえるかがホテルの成功のカギを握る」と指摘する。

外資系高級ホテルも

 外資系の高級ホテルも相次いで開業する。コロナ後を見据えた訪日客の受け入れのほか、国際会議の誘致に弾みがつくと期待されている。

 福岡市・大名に来春開業する「ザ・リッツ・カールトン福岡」は、天神地区で最も高い25階建ての再開発ビル(高さ111メートル)の高層階に入る。全室が50平方メートル以上で、「五つ星ホテル」をうたう。福岡都市圏では、国際会議の誘致で高級ホテル不足が指摘されていた。

 長崎市のJR長崎駅前では、大型会議場を備えたMICE(マイス)施設に隣接して「ヒルトン長崎」が昨年11月にオープン。西九州新幹線(武雄温泉―長崎)開業を機にJR九州が整備する新長崎駅ビル(13階建て)には「長崎マリオットホテル」が2023年秋に営業を始める予定だ。

 鹿児島市でも県内初の外資系高級ホテルとして「シェラトン鹿児島」が来春の開業を控えている。

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3208035 0 ニュース 2022/07/29 05:00:00 2023/04/27 15:06:28 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/07/20220728-OYTAI50007-T.jpg?type=thumbnail

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